研究課題
生体組織および生鮮食品の保存期間を長期化するためには、両者に共通して存在するたんぱく質の状態を維持することが重要であり、その劣化の指標として考えられる水の状態を計測することが必要である。そこで、モデル生体・食品としてグルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、トレハロースおよびマルトースの6種類の糖を糖濃度10%~40%に調製した試料、およびこれら6種類の糖とゼラチンを一定割合で混合した試料を用いて誘電スペクトル、水分活性および凍結水量を測定した。得られた結果から、糖を添加したゼラチンゲルの水の様相はDebye緩和の2項の重ね合わせ記述可能であり、糖を添加したゼラチンゲルにおいて、まず表面の自由水が乾燥するまで乾燥速度は一定であるが、自由水がなくなると結合水1(t1緩和時間がt1=10-9sにおける結合水)が乾燥し、それに伴って水が存在する表面積が徐々に小さくなり、乾燥速度が小さくなるのではないかと示唆された。また、糖を添加すると、より高い水分率で定率乾燥期間および減率乾燥期間を迎えることが分かった。その水分率の差は混合比が水35g(初期含水率70%)、糖5g、ゼラチン10gまたは水40g(初期含水率80%)、糖5g、ゼラチン5gのときには糖添加量が増大するにつれて増大したが、混合比が水45g(初期含水率90%)、糖1g、ゼラチン5gの場合には顕著な糖添加量依存性は見られなかった。以上のことから、定率乾燥期間において凍結水および自由水が減少し、減率乾燥期間において水分活性に関与する水および結合水1が減少することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予算の制約により高機能形熱画像計測装置の購入を断念したため、この点に関する進捗は本研究課題以外の競争的資金が獲得できるかどうかに依存するが、モデル生体・食品の凍結・解凍挙動の把握に関しては十分な基礎データが得られたことから、当初の計画以上にとまでは言えないがおおむね順調に進展していると判断した。
高機能形熱画像計測装置の購入に関しては本研究課題以外の競争的資金が獲得できるかどうかに依存するが、まずは同装置がなくとも実施可能な実験計画を立案し、遂行することとしたい。
当初予定の物品(高機能形熱画像計測装置)の購入を断念したこと、および旅費支出が当初の想定を下回ったことにより、次年度使用額が生じた。
消耗品購入および学会発表旅費に充当する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件)
International Journal of Refrigeration
巻: 56 ページ: 165-172
doi:10.1016/j.ijrefrig.2014.11.011
Food and Bioprocess Technology
巻: 8 ページ: 1349-1354
10.1007/s11947-015-1497-9
Drying Technology
巻: 33 ページ: 1614-1620
10.1080/07373937.2015.1029073
Food Science and Technology Research
巻: 21 ページ: 175-186
10.3136/fstr.21.175
High Pressure Research
巻: 35 ページ: 203-213
10.1080/08957959.2015.1023197
Foods
巻: 4 ページ: 148-158
10.3390/foods4020148
冷凍
巻: 90 ページ: 419-426
巻: 90 ページ: 107-110