研究実績の概要 |
植物の水分管理は,生育とともに生産物の品質管理や生産性向上において重要な要素であり,生育時期あるいは環境に応じて,適正にかん水を行うシステムの構築が重要となっている.そのためより客観性の高い水分センシング法の開発が重要であるといえる.本研究では,植物の異なる水分状態を電気的に計測し,そのデータの記録ならびに電気シグナルとして利用できる計測装置のプロトタイプの開発を行い,異なる水分状態の計測を試みた. 作成した電気的計測装置は,水分センサ部分ならびにデータ変換・記録部分から構成される.水分センサ部分では,金属製のクシ形センサに水分の吸湿素材(ろ紙)を接着させ,吸湿素材に吸着された蒸散による水分量をクシ形センサにより静電容量として計測する.データ変換・記録部分では,静電容量を周波数,さらに周期(ナノ秒,ns)へと変換し,SDカードに1秒単位で周期データを記録する. 本装置により植物(カンキツ)の水分状態を計測し、ポロメータによる蒸散速度との関連を検討した結果,十分な水分状態の樹体(平均蒸散速度3.4mmol・m-2・s-1)の周期は5,650~5,700nsを示した.一方,水分ストレス樹体(平均蒸散速度1.0mmol・m-2・s-1)の周期はほぼ5,500ns以下であった.さらに,異なる蒸散速度と周期値の関係をみると,両者の間には正の相関がみられた.またWiFiSDカードを利用することで水分計測データをタブレットやかん水用電磁弁に送り開閉に用いることができる. このように,水分状態の異なる植物における蒸散速度と周期値には密接な関連がみられることから,本装置による周期の計測によって葉中の水分状態を把握できると考えられる.また,水分ストレス時の特定の値の周期(あるいは周期の幅など)を指標としてかん水管理に利用できると考えられる.
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