研究課題/領域番号 |
15K14836
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 史彦 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30284912)
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研究分担者 |
内野 敏剛 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70134393)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞計測 |
研究実績の概要 |
本研究は、青果物細胞組織の微細構造をμX線CTや共焦点レーザ顕微鏡等の最新観察機器によってマイクロからナノレベルで観察し、画像処理を行うことによって構造に関する形態的特徴量を抽出、また、AFMの持つ種々の走査機能を駆使することによって細胞壁の力学的特性や熱物性を直接計測し、観察と計測から得たデータと青果物の品質(硬さや食感など)の関係を明らかにすることを目的とする。本年度はμX線CTと共焦点レーザ顕微鏡により、それぞれリンゴおよびジャガイモの構造解析と品質の関係について調査した。 まず、μX線CTによるリンゴ果肉の観察では、脱水処理した材料ならびに無処理の材料の3次元構造を観測し、細胞壁と空隙の構造を明らかにした。逆浸透による脱水処理では細胞が収縮するため健全な細胞構造が抽出できないことから、無処理材料より空隙に関する特徴量の抽出を行った。この観察では、400μm×400μm×400μmのみを切り出し、空隙率ならびに空隙のつながりを観察した。別途、X線CTによって観察したキュウリの貯蔵試験では、貯蔵期間の経過とともに空隙率が増加すること、部位によりその進行が異なること等を明らかにしており、μX線CTでも同様の結果が観察されるものと考える。次年度は、この進行と硬さ、見かけ密度、水分等との関係を明らかにする予定である。 次に、共焦点レーザ顕微鏡によるジャガイモの加熱過程での構造変化観察では、成形した材料を70℃~90℃のお湯に浸漬し、DiIで染色した細胞壁の構造変化を観察するとともに、LCRメータにより電気的特性を計測、また、材料の硬さをクリーメータで測定し、細胞の破壊状況と物性値の関係を明らかにした。次年度は、顕微ラマン顕微鏡により細胞壁構造ならびにペクチンの存在部位を明らかにするとともに、AFMによる硬さ測定を実施し、マクロレベルでの観察結果との関連性を調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)μX線CT及び顕微ラマン分光装置等による細胞組織構造の観察と解析、(2)原子間力顕微鏡による細胞壁微細構造の観察と解析、(3)理工学的特性および品質と微細構造の関係についての3中課題うち、おもに(1)と(3)について研究を遂行してきた。(1)では、μX線CT観察による青果物細胞組織の構造的特徴を画像解析によって抽出し、青果物の種類ごとの形態的特徴の分析する手法を確立した。また、(3)については、貯蔵中における青果物の品質劣化の度合いが個体レベルCT画像に明瞭に表れ、見かけ密度や空隙率、硬さとの相関を見出すことが可能であることを明らかにしたことから、今後、ミクロとマクロをつなぐことが十分に可能であると考える。また、共焦点レーザ顕微鏡による観察でも、細胞構造が電気的特性と硬さと高い相関を持つことを見出すなど、研究は順調に遂行しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に引き続き、3課題について研究を遂行し、データの蓄積と解析方法の確立に努めるが、新たな課題として顕微ラマン分光装置と原子間力顕微鏡による観察を充実し、より微細な構造について観察と構造解析を進めて行く。また、μX線CT観察による青果物細胞組織の観察では、青果物の貯蔵中の品質変化をCT画像から評価する方法を確立する。特に、CT画像から得られる平均HU値やその偏差、ピーク値と見かけ密度、硬さ等との相関を明らかにする。さらに、顕微ラマン分光観察により細胞質材料の成分分布マッピングを行う。AFMによる観察では、細胞壁を構成する多糖類(セルロース、ヘミセルロース、ペクチンなど)に着目し、高分子鎖の長さや枝分かれ、網状構造を実測するとともに、種々の走査モードを選択して弾塑性率や熱拡散率を直接計測し、マイクロスケールや巨視的特性と比較する。最終的には、マイクロからナノ微細構造測定結果から青果物の品質を評価する方法について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
μX-rayCT等機器の使用料の請求が次年度となること、使用料が高い顕微ラマン分光装置を次年度に集中して使用することから機器使用料として次年度に予算を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に機器使用料として使用する。
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