血清,受胎産物および子宮内膜由来のエクソソームに内包されるマイクロRNA(miRNA)に焦点をあて,ウシの妊娠診断・新規バイオマーカーとしての可能性を検証することを目的とし,今年度は栄養膜(胎盤)および子宮内膜組織に発現するmiRNA分子種について検証すると共に,miRNAマイクロアレイ,特異的miRNA分子種測定の基盤確立を試みた。 独自に開発したmiRBase 19.0 対応のウシ・カスタムmiRNAマイクロアレイ(Agilent G4474A-063969、755 miRNA対応配列搭載) を用いて,妊娠20日齢付近(着床期)および35日齢の栄養膜におけるmiRNAの発現解析を行った。着床期の栄養膜で有意に高い発現を示す44分子種(2倍以上,p<0.05)のmiRNAが検出され,分子種特異的な定量的RT-PCR法により検証を行ったところ,miRNAマイクロアレイとほぼ同様な傾向が認められた。変動miRNAの標的遺伝子についてin silico 解析を実施したところ,4種類のmiRNA分子種がインターフェロン・タウの3’非翻訳領域と相互作用する可能性が示唆された。子宮内膜組織におけるmiRNAの発現については,妊娠35日齢の妊娠角と非妊娠角における比較を行ったところ,12種類のmiRNA分子種の変動が認められた。これらのmiRNA分子種の個別定量および標的遺伝子の探索については解析中である。現在までに得られた成果から,着床期の栄養膜および妊娠角子宮内膜に特異的に発現するmiRNA分子種が明らかとなった。さらに,miRNAマイクロアレイと定量的RT-PCRの検討結果から,特異的miRNA分子種測の測定基盤が確立された。
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