研究実績の概要 |
本研究の目的は、黒毛和種牛ルーメンの離乳前後における絨毛組織の形態的および機能的発達に関連する因子を同定することである。離乳前後の絨毛組織に関して次世代シークエンサーによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、離乳前後のルーメン絨毛組織における遺伝子発現の変動を比較、検討した。離乳前区(n=5, 3週齢)および離乳後区(n=5, 15週齢)の去勢黒毛和種牛より採取したルーメン絨毛組織からRNAを抽出し、RNA-Seqによりライブラリ作製およびシークエンス解析を行った。得られたシークエンス情報を用いて、解析ソフトのCLCにより離乳前後における遺伝子発現量の比較を行い、発現量に差があったものについてパスウェイ解析を行った。離乳前後で遺伝子発現に変化がみられたものは871個の遺伝子であり、その内423個の発現が離乳後に上昇、395個が減少していた。パスウェイ解析の結果により次のような結果を得た。 1.ケトン体生成に関与する遺伝子の発現が離乳後に上昇することから、ルーメン発達のマーカーとしてこれらの遺伝子は利用できる可能性が示唆された。 2.PPARαが離乳後に活性化しているレギュレーターとして同定され、その標的遺伝子群の中に離乳前後におけるルーメン発達関連遺伝子が存在する上流因子解析の結果、ビタミンA誘導体であるトレチノイン(オールトランスレチノイン酸)が離乳後に機能しているレギュレーターとして同定され、その標的遺伝子群の中に離乳前後におけるルーメン発達関連遺伝子が存在する可能性が示唆された。可能性が示唆された。
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