本研究では、これまで全く報告の無い、哺乳類の未成熟卵における核輸送の特性について調べることを目的とし、核外輸送レセプターであるエクスポーチンの方向から解析した。核外輸送レセプターとして、最も一般的なエクスポーチン1(XPO1)に加え、XPO6およびCSE1Lを、またそれぞれのレセプターが運ぶカーゴとしてXPO1にはSnurportin-1(SNUPN)とWee1B、XPO6にはβアクチン(ACTB)、CSE1Lにはimpotinα-1を設定し、ブタ未成熟卵より遺伝子をPT-PCRによりクローニングした。核レセプターには発現確認のためのFlagを、カーゴには局在確認のためのEGFPを融合したベクターを構築した。これらのRNAをin vitroで合成しブタ卵に注入し、mRNA の注入により発現を、またアンチセンスRNA注入により発現抑制を確認した。これらの影響を解析した結果XPO1を過剰発現するとカーゴであるSNUPNとWee1Bの核内局在が減少することが確認され、XPO1がブタ未成熟卵においても核外輸送レセプターとしての機能を持つことが示された。XPO1アンチセンスRNA注入により発現を抑制すると、XPO1抑制卵は培養48時間後の成熟率には変化が無いが、減数分裂の再開が有意に遅れることが明らかとなった。これはXPO1特異的阻害剤であるレプトマイシンBを処理した場合と同様であった。逆にXPO1を過剰発現すると減数分裂の再開が有意に早まることが明らかになった。これまで核輸送の変化により減数分裂に影響が出ることを示した報告は無く、本研究は核輸送が哺乳類卵の減数分裂の正常な進行に重要な役割を果たすことを示す初めての実験結果となった。
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