前年度の試験により、初乳細菌叢が仔豚の腸内細菌叢の供給源になっている可能性が示唆されたので、本年度は、母豚飼料に機能性素材を与えることで、1.初乳中の細菌叢が変化するか、2.仔豚の腸内細菌叢が変化するかを検討した。また、初乳中細菌叢が分娩後24時間の間に変化するかを確認した。細菌叢の解析には全て次世代シーケンサーによる16S rRNAメタゲノム法を用いた。その結果、母豚飼料へ機能性素材(未発表成果のため素材名は非公開とするが、素材3種の混合物)を添加することで、添加していない母豚に比べて初乳細菌叢中の大腸菌の割合が低下し、その産仔(7日齢時)の腸内細菌叢構成も変化した。特に、仔豚腸内細菌叢中の大腸菌の割合が初乳中の細菌叢と同様に低下した点は初乳が腸内細菌叢の供給源となっている可能性を示唆している。さらに、この仔豚で頻発していた下痢症状も顕著に改善することができた。この結果から、改めて初乳細菌叢が仔豚の腸内細菌叢の供給源になっている可能性が強く示唆され、初乳細菌叢の改善が仔豚の健全腸内細菌叢の形成に重要であることが示された。 これに加えて、初乳中の細菌叢は分娩時と離乳時では大きく変化するものの、分娩後24時間という、いわゆる初乳が分泌される期間中にはほぼ変化しないことがわかった。これは、5頭の母豚で評価して、共通していた。このことから、出生時間による初乳摂取タイミングの差は、乳中細菌叢という観点においては、仔豚に影響しないことが示唆された。
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