研究実績の概要 |
本課題では、黒毛和種去勢牛を用い放牧が血中microRNAと骨格筋組織の遺伝子発現に与える影響を解析する。18ヶ月齢前後の去勢牛8頭を用い、放牧の有無で放牧区と舎飼区へと各4頭振り分け、舎飼区では濃厚飼料を多給し放牧区は放牧する。バイオプシーにより最長筋サンプルを採取し、また採血を行う。血液中microRNAの網羅的解析をマイクロアレイ法により行い、その結果を解析し放牧によって変動するmicroRNAをスクリーニングする。さらに、放牧が最長筋の筋特異的遺伝子発現に及ぼす影響をリアルタイムPCR法により解析する。これらの結果から、放牧が血中microRNAの変動に及ぼす影響と、血中microRNAと最長筋における遺伝子発現の関係を明らかにする。本年度はmicroRNAマイクロアレイの結果を詳細に解析すると共に、筋肉中のmicroRNAおよび遺伝子発現量を解析しこれらの関係を検討した。 血中エクソソーム由来miRNAのマイクロアレイ解析の結果を定量的PCRにより確認したところ、miR-10bの発現が放牧区で高かったのに対して、miR-17-5pをふくむ10種類のmicroRNAの発現が放牧区の方で低かった。機能解析の結果、これらのmiRNAはblood vessel morphogenesis, plasma membrane, focal adhesion, endocytosis, collagen, ECM-receptor interaction, phosphorylationに関与していた。最長筋においても、血中と同様放牧区においてmiR-10bの発現量が多く、ウシに特異的であるmiR-2478の発現量は多い傾向が見られた。放牧区の最長筋において、miR-10b/miR-2748の標的と考えられるDNAJB2, PTEN, SCD1などの発現量が高かった。
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