研究課題
本研究は、環境中に生息するアメーバ等の原生生物が「病原体の自然界での潜伏」と「環境菌から病原菌への進化」において重要な役割を担うのではないかとの仮説を立て、環境サンプル中の細菌および原生生物組成を明らかにすることを目的とした。タイ王国の類鼻疽流行地から採集した土壌および環境水およびザンビア共和国首都ルサカ近隣で採取した環境水を材料に原核生物16SリボソーマルRNA遺伝子および真核生物18SリボソーマルRNA遺伝子の超可変領域をPCR増幅し、Illumina MiSeqを用いてアンプリコン解析を実施した。タイ王国の類鼻疽流行地由来サンプルからは、類鼻疽病原体であるBurkholderia pseudomalleiに相同性の高い配列が多数得られた。一方で、解析した16SリボソーマルRNA遺伝子領域の配列のみではB. pseudomalleiと近縁である非病原性のB. thailandensisと区別が困難であり、今後MinIONなどのロングリードシーケンサーを用いた解析の必要性が明らかとなった。ザンビア共和国由来のサンプルからは、FusobacteriumおよびTermimonas等が最優占細菌属として検出されたが、当地で流行する感染症との関連は見出せなかった。真核生物18SリボソーマルRNA遺伝子の解析については、データベース整備が進まず、多くのリードのアノテーションが困難となる課題が残った。今後、データベースの拡充とリボソーマルRNA遺伝子間領域であるITS(internal transcribed spacer)1 および ITS2等の他の超可変領域を追加した解析が必要と考えられた。
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