研究課題/領域番号 |
15K14851
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高田 礼人 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (10292062)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人獣共通感染症 / エボラウイルス / フィロウイルス / 抗体 / 治療法 |
研究実績の概要 |
エボラウイルスはヒトまたはサルに急性で致死率の高い感染症(エボラ出血熱)をひき起こす。効果的なワクチンや治療薬は実用化されていないが、抗体療法が有効である事が示されている。しかし、現在見つかっているエボラウイルスは系統学的に5種に分けられており抗原性が大きく異なっているため、エボラウイルス種間交差中和抗体の報告は少なく、治療用の交差反応性のモノクローナル抗体が探索が求められている。本研究では、全てのエボラウイルス種に交差反応性を示す中和抗体の作出法を検討する。 H27年度の成績で、通常のウイルス蛋白質抗原(ウイルス様粒子など)を単独で用いた免疫法では、エボラウイルス種間交差反応性モノクローナル中和抗体が得られなかったため、本年度は別の免疫法を試みた。すなわち、エボラウイルス(Zaire species)の表面糖蛋白質(GP)の遺伝子をゲノム内に組み込んだ増殖性の水疱性口炎ウイルスを用いた。本ウイルスを経鼻的にマウスに感染させるとエボラウイルスGPに対する抗体が誘導された。マウスが回復して数週間後にエボラウイルス(Sudan species)のGPを持つウイルス様粒子の腹腔内投与でブーストする免疫手法を試みた。その結果、誘導される抗体産生細胞の中にはザイールウイルスに対する抗体を産生するものとともに、複数のエボラウイルス種に反応する抗体を産生するものも誘導される可能性が明らかとなった。また、一部の抗体はマールブルグウイルスにも交差する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの免疫方法を変えることによって(蛋白質抗原からウイルス感染へ)、複数のフィロウイルス種に対する交差反応性中和抗体が誘導される可能性が示唆された。それを今後応用して、目的のモノクローナル抗体が得られる可能性が高まった。
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今後の研究の推進方策 |
エボラウイルス(Sudan species)の表面糖蛋白質(GP)の遺伝子を持つ増殖性の水疱性口炎ウイルスをマウスに感染させ回復した後に、エボラウイルス(Zaire species)のGPを持つウイルス様粒子でブースト免疫する手法を試みる。また、エボラウイルスとマールブルグウイルスに交差反応する抗体の作出も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に予定していた免疫法によるモノクローナル抗体の作出とその解析がスムーズに進んだため、抗体作出、性状解析、蛋白質精製等に必要な費用が予想よりも少額で済み、繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度における未使用額の使途内容は、H28年度に得られた結果を踏まえて、これまでの成績の再現性確認実験および多方面からのアプローチを含めた詳細な検証実験を実施するための物品費(試薬類、キット類、実験動物、プラスチック器具など)。
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