エボラウイルスはヒトまたはサルに急性で致死率の高い感染症(エボラ出血熱)をひき起こす。効果的なワクチンや治療薬は実用化されていないが、抗体療法が有効である事が示されている。しかし、現在見つかっているエボラウイルスは系統学的に5種に分けられており抗原性が大きく異なっているため、エボラウイルス種間交差中和抗体の報告は少なく、治療用の交差反応性のモノクローナル抗体の探索が求められている。本研究では、全てのエボラウイルス種に交差反応性を示す中和抗体の作出法を検討する。 H28年度の成績で、エボラウイルス(Zaire species)の表面糖蛋白質(GP)の遺伝子をゲノム内に組み込んだ増殖性の水疱性口炎ウイルスをマウスに感染させるとエボラウイルスGPに対する抗体が誘導され、マウスが回復して数週間後にエボラウイルス(Sudan species)のGPを持つウイルス様粒子の腹腔内投与でブーストする免疫手法によって、複数のエボラウイルス種およびマールブルグウイルスに交差反応する抗体が産生される可能性が示唆された。そこで、この方法によって免疫したマウスの脾臓細胞を用いて、ミエローマ細胞と融合させ、モノクローナル抗体産生細胞の確立を試みた。その結果、数クローンの交差反応性中和抗体が得られた。そのうち3クローンはZaire speciesを含めた数種のエボラウイルスに対して反応性を示し、1クローンは、全てのエボラウイルス種およびマールブルグウイルスに対して中和活性を示すものであった。
|