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2015 年度 実施状況報告書

癌組織様オルガノイドの樹立による筋線維芽細胞の癌ニッチとしての役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K14856
研究機関山口大学

研究代表者

大浜 剛  山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (50579018)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード筋繊維芽細胞 / 消化管
研究実績の概要

近年、癌の成長・悪性化には、癌組織中の微小環境(癌ニッチ)が重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。特に、筋線維芽細胞は癌ニッチの主役として注目されている。しかし、筋線維芽細胞がどのように癌細胞の成長や悪性化を制御しているのか、反対に癌細胞が筋線維芽細胞の挙動にどのような影響を与えるかなど、癌細胞と筋線維芽細胞の相互作用についての分子機構はほとんど明らかになっていない。
消化管の筋線維芽細胞は上皮細胞の足場として存在し、その組織学的局在から上皮ニッチとしての重要性が古くから指摘されてきた。生理的な重要性に加え、癌ニッチとしての病態生理的な重要性が明らかになったことでさらに注目が高まっているが、これまで適切な細胞株が存在しなかったことがこの分野の研究の進展を妨げてきた。申請者はこの問題を解決するため、世界で初めてマウス腸筋線維芽細胞株を樹立した。
本研究は、胃癌および大腸癌における筋線維芽細胞の癌ニッチとしての役割を解明することを目的とし、(項目A)従来の細胞間相互作用解析法を用いた検討、(項目B)癌組織様オルガノイドを用いた検討、の2つの視点から解析する。
本年度は、項目Aについては、マウス正常上皮細胞株aMoC1にがん促進因子であるRasV12を安定発現させた細胞株aMoC1-RasV12を作製した。これら2種類の細胞株の培養上精が筋繊維芽細胞に与える影響を検討し、aMoC1-RasV12の培養上精に筋繊維芽細胞の遊走を促進する作用があることを見出した。現在、培養上精中のいずれの因子によって遊走が促進しているかを解析している。項目Bについては、ヒト大腸癌組織と周辺部の正常部組織からエアーリキッド法によるオルガノイドの作製を試みている。また、それぞれの組織から筋繊維芽細胞を単離し、その正常の違いの比較を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、胃癌および大腸癌における筋線維芽細胞の癌ニッチとしての役割を解明することを目的とし、(項目A)従来の細胞間相互作用解析法を用いた検討、(項目B)癌組織様オルガノイドを用いた検討、の2つの視点から解析する。
項目Aについては、昨年度マウス正常上皮細胞株aMoC1にがん促進因子であるRasV12を安定発現させた細胞株aMoC1-RasV12を作製し、これら2種類の細胞株の培養上精が筋繊維芽細胞に与える影響を検討した結果、aMoC1-RasV12の培養上精に筋繊維芽細胞の遊走を促進する作用があることを見出すことができた。現在、培養上精中のいずれの因子によって遊走が促進しているかを解析しているが、候補となる因子も見つかって来ているため、順調に進展していると考える。
項目Bについては、ヒト大腸癌組織と周辺部の正常部組織からエアーリキッド法によるオルガノイドの作製を試みている。エアーリキッド法は、従来のクリプト上皮や上皮幹細胞単独で作製するオルガノイドと異なり、筋繊維芽細胞を含む様々な細胞を含有する。外科手術時に摘出される新鮮標本が必要なため、思うように研究が進展していないことから、本項目についてはやや遅れていると判断する。
全体を通しては概ね順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

項目Aについては、aMoC1-RasV12の培養上精に含まれる筋繊維芽細胞の遊走を促進する因子の同定を行う。現在、RasV12により発現量の増加するサイトカイン・ケモカイン類をreal-time PCR法を用いて網羅的に検討したのちに、発現量の増加したものについて、筋繊維芽細胞の遊走に与える影響を解析している。候補となるサイトカインが上がっていることから、今後は①RasV12により当該サイトカイン発現が上昇する分子機構、②当該サイトカインによって筋繊維芽細胞の遊走が促進する分子機構、を明らかにして行く。
項目Bについては、外科手術時に摘出される新鮮標本が必要なため、研究の進展の予測が難しいが、引き続きヒト大腸癌組織と周辺部の正常部組織からエアーリキッド法によるオルガノイドの作製を行う。臨床サンプルには個体差が存在する。大腸癌由来のオルガノイドについては、凍結保存が可能であり、ある程度の標本数から作製したオルガノイドを集めたいと考えている。また、同時にそれぞれの組織から筋繊維芽細胞を単離し、その正常の違いの比較を行っており、癌組織中の筋繊維芽細胞と正常組織の筋繊維芽細胞が、上皮細胞や癌細胞に与える影響についても解析していく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Protein Phosphatase Methyl-Esterase PME-1 Protects Protein Phosphatase 2A from Ubiquitin/Proteasome Degradation2015

    • 著者名/発表者名
      Yabe R, Miura A, Usui T, Mudrak I, Ogris E, Ohama T*, Sato K
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 10(12) ページ: e0145226

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0145226

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 消化管の炎症・癌におけるタンパク質脱リン酸化酵素の役割2016

    • 著者名/発表者名
      大浜剛
    • 学会等名
      第89回日本薬理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-03-09 – 2016-03-11
  • [学会発表] Protein Phosphatase Methyl Esterase PME-1 protects Protein Phosphatase 2A from ubiquitin/proteasome degradation2015

    • 著者名/発表者名
      Yabe R, Miura A, Sato K, Ohama T
    • 学会等名
      Europhosphatase 2015
    • 発表場所
      Finland, Turku
    • 年月日
      2015-06-24 – 2015-06-29
    • 国際学会
  • [学会発表] Regulation of Beclin 1 association with Atg14L and autophagy by PP2A and DAPK32015

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara N, Usui T, Sato K, Ohama T
    • 学会等名
      Europhosphatase 2015
    • 発表場所
      Finland, Turku
    • 年月日
      2015-06-24 – 2015-06-29
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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