研究課題/領域番号 |
15K14860
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
新井 智 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (80321868)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共生細菌 / 多様性 / ベクター |
研究実績の概要 |
2015年の研究では、これまでに捕獲したイエカ種のボルバキア感染について解析を進めた。ボルバキアは、昆虫の50-60%に感染しているとされているものの、コガタアカイエカにはボルバキア感染が確認できなかった。一方、コントロールとして比較したアカイエカでは、日本およびベトナムで捕獲されたどちらのサンプルからもボルバキアが検出された。アルボウイルスなどのウイルスを媒介する蚊は、同一種として分類される蚊であってもウイルス媒介能にかなりの違いが報告されている。そこで共生細菌に加え宿主であるコガタアカイエカについても遺伝子レベルで比較したところ、単一種と考えられてきたコガタアカイエカが2種類の異なる種に分類される可能性が明らかになった。共生細菌が感染したダニ細胞を分離するため、抗生物質不含の培地で細胞分離を試みたが、多様な手法で細胞分離を進めたがいずれの方法でも環境細菌、もしくはカビのコンタミネーションを防ぐことができなかった。アカイエカに検出したボルバキアの遺伝子配列を比較したところ、得られた配列はネッタイイエカやショウジョウバエのボルバキアにかなり近縁であった。これらの結果は、コガタアカイエカにもネッタイイエカやショウジョウバエのボルバキアが感染する可能性を示しており、すでに分離されているショウジョウバエ由来ボルバキアを用いてコガタアカイエカの増加を抑制したり産卵数のコントロールできる可能性を示していると推測された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共生細菌のボルバキアは、昆虫の40-50%に感染していると推測されておりコガタアカイエカにも感染していると予想していた。しかしながら、検査に利用したサンプルでは、コガタアカイエカにボルバキアは検出できず、多様性比較ができなかった。また、ボルバキアに感染したダニ細胞をダニの卵から分離することを試みたが抗菌薬を用いない条件では環境細菌や真菌を抑制することができず、ボルバキアに感染したダニ細胞の分離はできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
北海道で捕獲したダニ、日本で捕獲した蚊について次世代シークエンス法でにより網羅解析を進めている。一方、ボルバキアの多様性が想定したよりも軽微であったため、ショウジョウバエ等、すでに分離されているボルバキアを用いてウイルス感染に対する影響を蚊の細胞を用いて比較する。また、コガタアカイエカの実験室株を用いてボルバキアの感染によりどのような影響が認められるか、産卵数やウイルス媒介能を指標に比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成28年4月1日以降となったため、 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 平成27年度分についてはほぼ使用済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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