本年度はケラチン15プロモーターの下流にCreERT2遺伝子を挿入したプラスミドコンストラクト(K15-CreERT2)ならびにネスチンプロモーターの下流にDsRed_flox-FlpERT2遺伝子を挿入したプラスミドコンストラクト(Nes-DsRed_flox-FlpERT2)を作成した。目的遺伝子の蛋白発現を確認するため、K15-CreERT2をpMSCV-DsRed_flox-EGFPとともにヒト培養角化細胞株であるA549細胞に、またNes-DsRed_flox-FlpERT2をpBS185-CMV-Creとともにマウス神経細胞株であるNeuro2a細胞にそれぞれ遺伝子導入した。前述の遺伝子が導入されたA549細胞では、4-hydroxytamoxifen存在下でEGFP陽性細胞が認められたのに対し、非存在下ではDsRed陽性細胞のみが認められた。一方で遺伝子導入されたNeuro2a細胞では、4-hydroxytamoxifenの非存在下ではDsRed陽性細胞が認められたのに対し、4-hydroxytamoxifen存在下では同細胞は認められなかった。以上の結果から、前述した2種類のプラスミドコンストラクトは、プロモーター活性の認められる哺乳動物細胞内において目的遺伝子を発現できることが確認された。 また毛包バルジ領域にネスチン陽性細胞またはその娘細胞が認められるかを確認するため、Nes-Cre/CAG-CAT-EGFPの成長期毛包および休止期毛包におけるGFP陽性細胞の局在を確認した。その結果、成長期毛包の外毛根鞘ではGFP陽性細胞が認められたのに対し、成長期毛包と休止期毛包のバルジ領域にはGFP陽性細胞が認められなかった。この事実から、同領域には外毛根鞘細胞の前駆細胞が存在しないか、あるいは被毛の再生過程で神経幹細胞-上皮幹細胞間の分化転換が認められる可能性を示した。
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