研究課題
平成28年度は、in vitro及びin vivoの実験系を用いて、痒みの発生機構の解明を目指す基礎的な研究を実施した。in vitroの実験系では、野生型及びTRP遺伝子改変NC/Tndマウスの脊髄後根神経節(DRG)から分離した知覚神経細胞を、細胞外マトリクス成分でコーティングしたシャーレを用いて培養し、神経突起を伸展させる実験系を確立した。この系を用いて様々な化合物を加えて培養することで、化合物による神経刺激の減弱効果を評価することが可能となり、止痒効果を有する薬物のスクリーニングが可能となった。TRP遺伝子改変マウスに由来するDRG細胞において、神経突起の伸展には野生型マウスと大きな違いが認められなかったが、薬物に対しては異なる反応性が認められている。今後さらに実験数を増やして、確度の高いデータを集積していく予定である。また、前年度に引き続いて、肥満細胞の脱顆粒反応におけるTRPA1タンパク質の役割を解析した。これにより、培養環境の酸素濃度の変化に反応して誘導される肥満細胞の活性化がTRPA1分子の欠損により顕著に減弱すること、低酸素反応性のサイトカイン産生にも変化をきたすことが示唆されるデータを得た。この成果を論文として取りまとめ、現在論文投稿中である。in vivoの試験として、SPF環境で飼育した野生型及びTRP遺伝子改変NC/Tndマウスに対して、ハウスダストマイト抗原クリームを塗布して皮膚炎を誘導し、皮膚炎症状の発現と引っ掻き行動の推移を解析した。その結果、TRPV1欠損NC/Tndマウスで皮膚炎症状の発現の遅延が認められているが、現在さらにマウスの頭数を増やして検討を進めている。さらにこれらの遺伝子改変マウスから採取したDRG細胞を培養して、発痒物質に対する反応性を調べており、TRP遺伝子改変マウス由来のDRG細胞における程反応性が確認できた。
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WAO J.
巻: 印刷中 ページ: In press
J. Appl. Microbiol.
巻: 120 ページ: 280-288
doi: 10.1111/jam.13012.
http://web.tuat.ac.jp/~mol_path/