研究課題
輸送ストレスは、ウマに発熱、肺炎、疝痛、蹄葉炎などの疾病要因となり、時には死に至ることもある。したがって、これを予防・治療するためには特異性の高い新奇早期診断パラメータの確立が必須である。本研究では早期診断・病勢評価パラメータとして、ウマ神経成長因子(NGF)の意義を明らかにするための研究を実施し、以下の成果を得た。1.ウマNGFのクローニング:サラブレットおよび温血種合計10頭の末梢血白血球から得られたcDNAとNGFの前駆体の配列に特異的なプライマーセットを用いて、RT-PCRを実施した。TAクローニングによってこのPCR産物を増幅・配列を解析し、ウマNGFの配列を明らかにした。また、多型性についても検討したが、10頭すべて同一結果であり、個体間に差は認められなかった。多種類の動物のとの比較を実施したが、いずれの種との間においても、90%以上の相同性が確認された。これまで、ウマの配列は推測はされていたものの、明確に証明はされておらず、その意味で世界で初めて配列を決定した。2.測定方法:得られた配列がNGFであるかどうかを確認するために、ウマNGF組換え体を発現するCHO細胞を作成した。まず、ウマNGF配列の相同性が一番高かったのがヒトであったことから、すでに市販されている抗ヒトNGF抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、陽性反応を示すことが明らかとなった。したがって、本抗体によるウマNGFの定量が可能とと判断された。以上の結果から、ウマNGFのクローニングに成功し、相同性の結果より推測された市販の抗ヒトNGF抗体がウマNGFの定量用として有用であることが明らかとなった。クローニングについては、国際専門誌に投稿済みである。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、クローニングの後、得られたウマNGF組換え体を利用して、単クローン抗体を作成する予定であったが、他種の動物との相同性が高かったため、予定を変更して市販の抗体を使用した。その結果、反応性が十分であったことから、今後は市販の抗体を利用した定量システムの構築をおこなうこととした。なお、他は当初計画通り実施し、良好な成果を得た。
市販の抗NGF抗体を利用した診断定量システムを構築し、それを利用し、28年度に予定しているストレス負荷による末梢血NGFの推移を検討する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Journal of Investigative Dermatology
巻: 136 ページ: 127-135
doi: 10.1038/jid.2015.363
Experimental Dermatology
巻: 24 ページ: 968-979
doi: 10.1111/exd.12814.
http://web.tuat.ac.jp/~mol_path/activity.html