研究実績の概要 |
当該年度は、まず口蹄疫ウイルス(Foot-and mouth disease virus ; FMDV)ゲノムRNAの非翻訳領域(5’UTR)内の40Sリボゾームの内部認識領域(Internal Ribosomal Entry Site; IRES)からの翻訳活性を各種動物由来細胞で比較解析を行った。HEK293(ヒト)、MDCK(イヌ)、MDBK(ウシ)、CPK(豚)細胞株でIRES活性を比較した結果、翻訳活性の強さはMDBK, MDCK, HEK293, CPK細胞の順であった。従って、FMDVの感染感受性との相関は見られなかった。また、MDCK, MDBK, CPK細胞を用いてIRES活性に関与する宿主因子をsiRNAを用いて探索した結果、poly-pyrimidine-tract binding protein (PTB), eukaryotic initiation factor 4E-binding protein 1 (4E-BP1)とIRES trans-acting factor (ITAF45)がFMDV-IRES活性に関与している事が明らかとなった。このうち、ITAF45はMDCK, MDBK, CPKの全ての細胞でFMDV-IRES活性に関与していたが、PTBと4E-BP1はMDBK、CPK細胞でのみFMDV-IRES活性に関与していた。以上の結果から、宿主因子により各種動物由来細胞での作用が異なり、PTBや4E-BP1はFMDVの感染感受性細胞でのみIRES活性に作用する事が明らかとなった。従って、PTBと4E-BP1はFMDV感染感受性の決定に寄与する可能性が示唆された。以上の結果は、BMC Veterinary Researchに報告した(12:66, 2016)。
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