研究課題/領域番号 |
15K14879
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
一戸 辰夫 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (80314219)
|
研究分担者 |
本庶 仁子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (80614106)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ゼブラフィッシュモデル / 免疫系 / 主要組織適合性抗原 / 造血細胞移植 / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、ゼブラフィッシュの優れたモデル生物としての特性を利用し、主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex, MHC)相同遺伝子の組み替え型個体や免疫不全個体の作成によって安定した造血細胞移植のシステムを確立するとともに、それらを利用して個体全体に存在するT細胞/B細胞レパトワの網羅的かつ鳥瞰的な解析技術を開発することである。この目的を達成するため、平成28年度は、前年度に開始したゼブラフィッシュの単一個体に存在する全てのT細胞クローンを、T細胞受容体CDR3コード領域遺伝子配列の高速シーケンシングによって、網羅的かつ半定量的に同定する技術をほぼ完成に近い段階まで開発を進めた。現在、さらに同様の方法を用いて、B細胞受容体を網羅的に解析する技術の開発にも着手している。また、前年度までに確立したゼブラフィッシュのMHC遺伝子のタイピング法を用いて、申請者の研究室で保有しているさまざまな野生型および遺伝子改変型ゼブラフィッシュのMHCハプロタイプを同定したところ、従来は報告されていない新しいクラスI遺伝子(U遺伝子)を見出し、現在その遺伝子全長のクローニングと機能解析を行っている。また、野生型同一種のゼブラフィッシュを用いたMHC部分不一致個体間におけるwhole kidney marrowの移植モデルを用いて、GVHDに相当する反応を誘導できる系を作成し、その全個体レベルでのT細胞レパトワの解析に着手している。なお、上記の次世代シーケンサーによるT細胞受容体解析系のヒトへの応用可能性も並行して検討しており、ヒトの造血幹細胞移植後のT細胞レパトワの再構築を行い、新知見が得られたので国内の複数の学会に結果を公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の心臓部となるT細胞受容体(TCR)・B細胞受容体(BCR)のCDR3領域遺伝子配列の網羅的同定技術に関しては、連携研究者と共同でMiSeqシステムをプラットフォームとする解析系を確立し、ゼブラフィッシュのTCR遺伝子の配列に基づいたアラインメントプログラムの開発が完成に近づいている。また、ヒトのTCR・BCRの網羅的同定が可能となっており、実際の臨床検体を用いた解析にも成功している。また、ゼブラフィッシュ個体のMHCハプロタイプ同定の過程で見出された新規MHCクラスI遺伝子のクローニングを進めており、今後全長の塩基配列の決定と、発現機能解析を計画している。野生型同一系統のゼブラフィッシュ間における造血細胞移植モデルの作成にも成功しており、上記のTCRアラインメントプログラムが完成次第、全個体レベルでの解析を行う準備を整えている。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度以上に研究の推進に必要な実験量が増大しており、特にゼブラフィッシュの野生型個体、免疫不全個体をレシピエントとする造血細胞移植モデルの確立および全個体レベルでの移植後免疫再構築の解析に必要な実験を優先的に推進するために、TCR/BCRの次世代シーケンサーによる遺伝子配列決定技術の開発は一部を連携研究者の研究室に委託して進めている。また、引き続き研究にかかわる研究室内の大学院生と技術補佐員の連携体制を強化し、実験のさらなる効率化と確実な推進を計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画のコアとなる次世代シーケンサーによるゼブラフィッシュT細胞受容体(TCR)・B細胞受容体(BCR)のCDR3領域遺伝子配列のアラインメントプログラムの作成および本研究の過程で見出されたゼブラフィッシュの新規MHCクラスI遺伝子のクローニングおよび発現機能解析のために平成28年度内に予定していた行程が完了しなかったため残額が発生し、研究期間を延長することとしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
ゼブラフィッシュTCR遺伝子配列のアラインメントプログラムを完成させるとともに、野生型同一系統MHCクラスI一致・不一致ゼブラフィッシュ個体間の造血細胞移植後における全個体のTCRレパトワ再構築の網羅的解析のための費用として使用する。また、われわれが見出した新規ゼブラフィッシュMHCクラスI遺伝子のクローニングと発現機能解析のための追加実験に使用する。
|