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2015 年度 実施状況報告書

性シグナル伝達を司る神経回路の機能実証

研究課題

研究課題/領域番号 15K14881
研究機関麻布大学

研究代表者

菊水 健史  麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードフェロモン / 扁桃体 / 性行動 / 攻撃行動
研究実績の概要

オスマウスの涙には、ESP1というフェロモンが含まれる。オスから分泌されたESP1は、メスの鼻の下部にある鋤鼻器官を刺激して、メスの性行動を促進させることがあきらかとなっていた。しかし、他のオスに対してどのような作用があるかは不明であった。今年度、ESP1が、異系統の尿の存在下、オスに攻撃を促す効果があることを見いだした。さらに、オスは、性成熟とともに分泌が増加するESP1が自分自身にも作用することによって、自身が持つ攻撃性がさらに高まることを明らかにした。ESP1を受容した雌雄マウスでは、その脳内で異なる神経細胞の活性化パターンを示す。この神経細胞の発火パターンの違いが、社会行動の性差に関与するかを検証するために、以前に活性化した神経細胞を薬理学的に再発火させることが可能な遺伝子改変マウスを用いて、活性化細胞の人為的操作による行動変化を調べた。この雌雄マウスへまずESP1を提示し、活性化した神経細胞に人為的受容体を強制発現させた。後日ESP1非存在下でこの人工受容体を薬理学的に再活性したところ、雄マウスではBNSTとMPAで、雌マウスではVMHとPMCoそれぞれ異なる脳領域の神経活性化が認められ、同時に雄マウスは、BALB雄尿の単独提示により高い攻撃性を示し、雌マウスは雄受容姿勢を高頻度で示した。このことはESP1による神経細胞の活性化パターンの違いが、社会行動の性的二型の制御に重要であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ESP1という単一化学物質はオスでもメスでも同じ受容体であるV2RP5を介し、オスでは攻撃性を、メスではオスの受容性を高めることが明らかになり、さらにその活性化神経回路の人為的操作によって、性的2型の行動を誘起することに成功した。これらの回路が明瞭に異なることから、当初の予想通り扁桃体内側核でのオスとメスでの情報伝達の違いが行動の性差を生み出す可能性が示された。扁桃体内側核に絞った解析が今後必要となる。

今後の研究の推進方策

扁桃体内側核には前部、後背側部、後腹側部と3つの亜核がしられている。これらへのフェロモン伝達経路の第一次中継核である副嗅球からの投射様式をオスフェロモン、メスフェロモンをそれぞれオスとメスに提示し、その活性化回路に差が認められるかを調べる必要がある。さらに同定された性特異的回路を人為的操作し、行動発現が変化するかどうかを調べる。

次年度使用額が生じた理由

免疫組織化学染色での抗体の染色がメーカーの欠番により、多少遅延した

次年度使用額の使用計画

早急に新規抗体を購入し、実験を実施

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Self-Exposure to the Male Pheromone ESP1 Enhances Male Aggressiveness in Mice2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Hattori, Takuya Osakada, Ayaka Matsumoto, Naoki Matsuo, Sachiko Haga-Yamanaka, Takaya Nishida, Yuji Mori, Kazutaka Mogi, Kazushige Touhara, Takefumi Kikusui
    • 雑誌名

      Current Biology

      巻: 26 ページ: 1229-1234

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2016.03.029

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Structure and function of neonatal social communication in a genetic mouse model of autism.2016

    • 著者名/発表者名
      T. Takahashi, S. Okabe, P. Ó Broin, A. Nishi, K. Ye, M. V. Beckert, T. Izumi, A. Machida, G. Kang, Seiji Abe, J. L. Pena, A. Golden, T. Kikusui, N. Hiroi.
    • 雑誌名

      Molecular Psychiatry

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1038/mp.2015.190.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 内分泌を社会から考える2015

    • 著者名/発表者名
      菊水健史
    • 学会等名
      神経内分泌学会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2015-09-18 – 2015-09-21
    • 招待講演
  • [学会発表] フェロモン伝達系の性差2015

    • 著者名/発表者名
      服部達哉、菊水健史
    • 学会等名
      神経内分泌学会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      2015-09-18 – 2015-09-21
    • 招待講演
  • [学会発表] Oxytocin forms inter-individual relationship2015

    • 著者名/発表者名
      Takefumi Kikusui
    • 学会等名
      日本神経科学会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2015-07-27 – 2015-07-30
    • 招待講演
  • [学会発表] Early weaning impaired fear extinction and decreased BDNF expression in the prefrontal cortex in adult C57BL/6 mice2015

    • 著者名/発表者名
      Kazutaka Mogi and Takefumi Kikusui
    • 学会等名
      日本神経科学会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2015-07-27 – 2015-07-30
  • [学会発表] Individual differences in mice courtship vocalizations are correlated with sexual emotion and neuronal activity in the ventral tegmental area2015

    • 著者名/発表者名
      Kouta Kanno and Takefumi Kikusui
    • 学会等名
      日本神経科学会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2015-07-27 – 2015-07-30
  • [備考] 麻布大学獣医学部伴侶動物学研究室

    • URL

      https://sites.google.com/a/carazabu.com/car/

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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