本研究は、我々が作出したDMDラットを用いて、その病態進行における筋衛星細胞老化の関与について詳細に検証し、さらにゲノム編集技術を用いた遺伝子改変による細胞老化阻止を図ることでDMDラットの病態進行を改善することを目的としたものである。本年度は以下のような研究成果を得た。 1.DMDラットの月齢に伴う病態進行について組織学的な解析を行った。その結果、生後1ヶ月で早くも進行性の筋病変(壊死・再生像)が観察され、3ヶ月齢になると線維化が、さらに5ヶ月齢には脂肪化がみられることが判明した。10ヶ月齢に至ると、筋病変の著しい進行によりDMDラットでは激しい削痩がみられるようになり、体重は野生型の約4分の3にまで減少していた。 2.DMDラット骨格筋に由来する初代培養細胞において細胞老化因子p16の発現が亢進していること、さらにその亢進にTGF-bシグナル経路の活性化が関与する可能性を示す結果を得た。さらにDMDラット骨格筋に由来する初代培養細胞では細胞老化の指標であるSA-betaGal陽性を示す細胞が出現することや、野生型ラット骨格筋由来の初代培養細胞にTGF-b処理を行うことでSA-betaGal陽性細胞が出現することを見いだした。 3.ゲノム編集によるp16遺伝子欠損ラットの作出に着手した。すでにout-of-frame変異をもつ個体が作出されており、現在、p16遺伝子欠損DMDラットを得るためにDMDラットとの交配が進行中である。
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