前年度の検討から、移植細胞を介した人工ヌクレアーゼのデリバリーは困難であることが示唆された。従って、本年度は、これに代わる新たな人工ヌクレアーゼの簡易的なデリバリー方法の確立を試みた。 第一に、受精卵を対象にしたエレクトロポレーションによる外来遺伝子の導入を試みたが、既報を超える効率的な条件の決定には至らなかった。続いて、細胞膜透過性シグナル配列を利用した遺伝子のデリバリー実験系の条件検討を行った。はじめに、MPG配列またはAA3H配列を付加したmClover2蛍光タンパク質配列の発現コンストラクトを構築し、試験管内でのタンパク質合成を試みたが、十分な合成量が認められなかった。そのため、培養細胞に遺伝子導入しその抽出タンパク質を利用することとした。マウス胎児線維芽細胞をはじめとする初代培養細胞への効率的な遺伝子導入条件を確定し、前述の発現子ストラクトを導入し、高い発現が認められた。しかし、助成期間内にこれらの抽出タンパク質を利用した遺伝子デリバリーの検討までは至れなかった。今後、受精卵や生体内の生殖細胞への応用実験を早急に検討し、特別な機器を必要としない人工ヌクレアーゼによる遺伝子組換え系が可能であるか報告する予定である。
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