研究課題/領域番号 |
15K14885
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
黒須 剛 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (70432432)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | デングウイルス / 出血熱 / 重症感染症 / 動物モデル / 感染 |
研究実績の概要 |
デングウイルス感染症は血小板減少症と血漿漏出を特徴とし、重症化するとショック症状に陥る。本研究では重症化機序の解明を試みている。重症化に伴う条件で血清中のTNF-αとIL-6が上昇していることを確認していたが、抗TNF-α中和抗体と抗IL-6中和抗体投与による感染マウスへの生存への影響を調べたところ、前者によって生存期間が大幅に延長した。後者の投与によっても死亡時期の延長が認められたが、影響は低かった。このことからもTNF-αが重症化に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 また、血管作用性の宿主因子であるAngiopoietin-1の投与により、抗TNF-α抗体と同様にマウス生存期間が伸びた。これら抗体またはAng-1投与後に得られたマウス組織を用いてトランスクリプト―ム解析を行った。 I型II型インターフェロンレセプターKOマウスに強い病原性を示したデングウイルスでも、I型インターフェロンレセプターのみのKOマウスでは病原性が弱い。以上の観察の検証のために、免疫が正常に近い動物を用いてより明らかな病原性を観察できるモデル作成のため、I型インターフェロンレセプターKOマウスを用いてウイルスの順化を行った。平成28年度も続ける予定である。 また病原性を決定するウイルス側因子の探索のために、培養細胞を用いて弱毒株の作成を行った。結果はマウス接種により今後確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表に移動があったためマウスの移動・繁殖などで遅れが生じた。しかし、年度後半には繁殖も軌道に乗り、平成28年度へ向けての準備が整えることができた。マウス組織から抽出したRNAを用いたマイクロアレイは、RNA分解を避けながら行わなければならず難易度が高いと考えられた。骨髄組織からの完全なRNA抽出は当初予想していないほど難易度が高かったが、実験を重ねることで安定してRNA抽出を行うことが可能となった。次年度は解析が進むと考えられ、研究計画全体としての進行状況は、概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
抗TNF-α抗体やAng-1投与によりマウス致死までの期間を大幅に延長することがわかり、これらの条件を比較解析していくことで、病態機序が明らかになると考えられる。動物組織からの純度の高いRNAを得ることがトランスクリプト―ム解析の鍵であったが、試行錯誤により技術的に可能となった。本年度得られた結果から、血小板減少症及び血漿漏出などの重症化に関与すると予想される生理学的経路、候補因子を得ている。次年度はこれら候補経路と因子について個々に検証を進める。検証は継時的なサンプルを用いて行い、候補因子の増減を動的に確認する。また阻害剤を用いた実験によりマウス生存や病態への影響を観察し、重要な因子の決定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動により、ノックアウトマウスを移動して新たに繁殖をしなけばならなく、実験に必要なマウスの確保に時間がかかったため、執行額が少なくなった。また研究代表の家族の健康理由により、約3ヶ月研究が滞った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は家族の健康問題が解決された。また平成27年度の最後の数カ月にマウス繁殖が軌道に乗ったた。マイクロアレイにより重症化に関与する候補因子が挙がっている。これらの阻害剤購入やマウス実験・維持費など、当初の全体計画に沿って今後の予算を執行する予定である。
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