研究課題/領域番号 |
15K14888
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
稲葉 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00137241)
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研究分担者 |
杉浦 喜久弥 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (30171143)
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40453138)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医療 / 統合動物科学 / iPS細胞 / 血小板 / バイオテクノロジー / トランスレーショナルリサーチ |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒトと共通の生活習慣病や老齢化による疾病が自然発症するイヌに着眼し、イヌのiPS細胞を作製し、本細胞を用いた再生獣医学研究を推進するもので、イヌiPS細胞を用いて、造血系分化誘導サイトカイン遺伝子を導入したフィーダー細胞上で培養した後、生体内での血小板生成過程を模した体外培養システムで、効率的に血小板へ分化誘導することを目的としている。本研究年度では、ドキシサイクリン誘導性レンチウイルスベクターを用いて作製したイヌiPS細胞株から血小板への分化誘導、およびイヌ造血サイトカインを発現するフィーダー細胞の作製について検討し、以下の結果を得た。 1.イヌ胎子線維芽細胞にドキシサイクリン誘導性レンチウイルスベクターを用いて、ヒト由来の4つの多能性関連転写遺伝子(OCT3/4、SOX2、KLF4およびc-MYC)を導入することにより得たイヌiPS細胞株を、骨髄間質細胞由来フィーダー細胞のOP9細胞上で造血サイトカインとともに分化誘導した結果、本細胞株から血小板に分化誘導することはできなかった。本細胞株の特性を調べた結果、本細胞株は、白血病阻害因子(LIF)が培養に必須である既存のイヌiPS細胞とは異なり、LIF非存在下で培養可能であり、Erk1/2シグナルにてその未分化状態を長期に維持している着床後後期胚盤胞期胚から得られるエピブラストの特性を有する細胞と考えられた。 2.イヌ造血サイトカイン(幹細胞(成長)因子、トロンボポエチン、およびエリスロポエチン)遺伝子を作製した。その後、これらの遺伝子をpiggyBacトランスポゾンベクターによりOP9細胞に導入し、イヌ造血サイトカインを発現するフィーダー細胞を継代培養中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回作製したイヌiPS細胞株は血小板への分化能が低いことが分かり、改めて血小板に分化誘導させ易い高品質なイヌiPS細胞株を作製する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、核初期化因子を導入したイヌ体細胞を、アクチビンレセプター様キナーゼ阻害剤、p38分裂促進因子活性化たんぱく質キナーゼ阻害剤などの低分子化合物の存在下で培養することにより、長期継代可能で血液系細胞へ分化し得る胚体外内胚葉細胞株の作製に成功しており、本細胞株を用いて今年度に引き続き次年度には、以下の4項目について研究を推進する。 1.イヌサイトカイン発現フィーダー細胞株の作製:継代培養中のイヌ造血サイトカインを発現するフィーダー細胞の株化を行う。 2.イヌ胚体外内胚葉細胞株から巨核球および血管内皮細胞への分化誘導:イヌ胚体外内胚葉細胞株をイヌサイトカイン発現フィーダー細胞上で培養することによって、巨核球および血管内皮細胞への分化を効率的に誘導する。 3.共培養細胞表面灌流による巨核球から血小板へ効率的な分化誘導:三次元フローチャンバー装置内でシート化した血管内皮細胞とイヌサイトカイン発現フィーダー細胞上に播種した巨核球を共培養し、ペリスタルティック方式による輸液ポンプを用いて細胞表面灌流を行い、巨核球から血小板放出の促進をはかる。 4.iPS細胞由来血小板によるイヌ血小板減少症に対する細胞治療:iPS細胞由来血小板を用いて血小板減少症のイヌに細胞治療を行う。
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