研究課題/領域番号 |
15K14889
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
香取 将太 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 特任研究員 (50562394)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経回路形成 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
中枢神経系は神経細胞の高密度な集合体なので、そこに含まれる神経回路を見るためには、何らかの方法で一部の細胞のみを標識する必要がある。本研究は、その技術開発とその技術を用いて実際に神経回路を形態的に観察することを目的とする。 本研究では、セロトニン神経という脳全体に軸索を投射させる神経に着目している。セロトニン神経は、摂食行動、睡眠、体温調節、攻撃性、情動、学習記憶など多様な脳機能に関与する。これまでに、セロトニン神経の正常な軸索の分布の制御に接着性の膜貫通分子プロトカドヘリンαが必要であることを報告している(Katori et al., J Neurosci 2009)。現在、セロトニン神経特異的にCreを発現するマウスのセロトニン神経に、Cre依存的に蛍光タンパク質を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)を感染させ、一部のセロトニン神経軸索のみを可視化する技術が確立できている。今後はこの技術を用いて、プロトカドヘリンα欠損マウスのセロトニン神経軸索を詳細に解析し、セロトニン神経の軸索投射におけるプロトカドヘリンαの役割を明らかにする予定である。 また、本研究では脊髄の神経細胞の動きにも着目している。大脳皮質など脳の神経細胞の移動については詳しく解析されているが、脊髄の神経細胞の移動については解析が進んでいない。これまでのところ、脊髄の細胞移動を可視化するために、子宮内電気穿孔法を用いて一部の細胞のみを標識する技術を確立できている。この技術を用いて脊髄の神経細胞の移動を解析した論文を現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で開発する新規マウスの仕組みは非常に複雑なので、それを成功させるためには、多くの確認作業が必要となる。現状では、まだマウス作製に進むことができておらず、当初の計画よりも遅れている状況である。一方、当初予定していた解析は別の方法を開発することで解析が可能となり、解析は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた新規マウスの開発を継続して進める。一方、別の方法で神経細胞を標識する技術が確立できており、新たな知見も得られている。後者に関しては論文として早急にまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究代表者が事故に遭い、一部予定していた研究が期間内に行えなかった。本年度の予算に、費用が比較的多く必要なマウスの作製及びその飼育費を計上していた。しかし、計画に遅れが生じ、マウス作製、およびその飼育費が不要となったため、次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、マウス作製とすでに確立できている神経細胞可視化の技術を用いて解析を進める。繰り越した予算はマウス作製、マウス飼育、解析、論文投稿等に使用する予定である。
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