研究課題/領域番号 |
15K14898
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 淳 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (70242930)
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研究分担者 |
伴野 豊 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50192711)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活史戦略 / 季節適応 / 昆虫 / 遺伝子 / 進化 |
研究実績の概要 |
1.ポリジーン系支配モデルで予想される染色体組成の再現と蛹期間の検証 (1)クワコ単一染色体ヘテロ保持カイコ(大造)系統シリーズの補完と維持:九州大学遺伝子資源開発研究センターでは,引き続きクワコ(坂戸産)由来の単一染色体ヘテロ保持大造系統シリーズを継代維持するとともに,クワコ第1(Z)および第19染色体保持系統の作製に着手した. (2)クワコ染色体ホモ接合系統の作製と蛹期間の調査:昨年度選抜したクワコ第8,11,15,18各染色体ホモ接合系統(コンソミック系統)を継代維持するとともに,蛹期間を再調査したところ,第11染色体コンソミック系統の雌個体において大造比較して2日程度の羽化の遅れが認められたが,それ以外の系統の蛹期間には大造との明白な差異は認められなかった.なお,昨年度の交配で得られた休眠卵に1/4の確率で含まれるクワコ第4染色体ホモ接合個体は孵化せず,胚子のまま致死していたことから,クワコ第4染色体上には新規胚致死遺伝子が存在する可能性が示唆された.また,クワコ第18染色体コンソミック系統とクワコ第8,11,15染色体コンソミック系統のいずれかの交配由来のF2(昨年度作製)を選抜交配して得たF3のジェノタイピングにより二種染色体ホモ接合雌雄を見つけ出し,それらを交配して二種染色体ホモ接合系統(第8+18,11+18,15+18)の休眠卵を得た.さらに,二種染色体ホモ接合系統同士(第11+18と15+18)を交配して三種染色体ホモ接合系統の作製に必要なF1の休眠卵を得た. 2.蛹期間調節に関与する遺伝子群の同定と機能解析 (1)DNA解析による原因遺伝子マッピング:昨年着手したddRAD-Seq法によるクワコ染色体上の遺伝子マッピング技術開発を継続し,第18染色体上の新規体色暗色化遺伝子の位置を一箇所(約700kbpの領域内)に確定できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り二種染色体ホモ接合系統を3種類作製し,三種染色体ホモ接合個体の作製に着手できたので,交配スケジュールは計画通り進行している.また,クワコとカイコの染色体DNA配列のアラインメントにより,ddRAD-Seq法を用いた遺伝子マッピングの精度が向上し,いよいよ遺伝子同定と機能解析への活用が可能となりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
1.ポリジーン系支配モデルで予想される染色体組成の再現と蛹期間の検証 (1)クワコ単一染色体ヘテロ保持カイコ(大造)系統シリーズの補完と維持:単一染色体ヘテロ保持大造系統シリーズを継代維持するとともに,着手した第1,19染色体ヘテロ保持系統の作製を完了させる. (2)クワコ染色体ホモ接合系統の作製と蛹期間の調査:二種染色体ホモ接合系統の蛹期間を調査するとともに,昨年度着手した三種染色体ホモ接合系統の作製過程で出現するさまざまな染色体キメラ個体の蛹期間も調査する. 2.蛹期間調節に関与する遺伝子群の同定と機能解析 (1)DNA解析による原因遺伝子マッピング:ddRAD-Seq分析により確定した第18染色体上の新規体色暗色化遺伝子の領域をさらに狭めるとともに,第4染色体上の新規胚致死遺伝子のマッピングも試みる.また,染色体キメラ個体のジェノタイピングおよびddRAD-Seq分析により蛹期間調節に関わる遺伝子群の染色体上の位置を確定させる. (2)原因遺伝子の配列および発現解析による機能推定:前項で確定した各種原因遺伝子のゲノム配列ならびに転写産物を解析することにより,各遺伝子の機能推定を試み,機能を考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者による系統維持ならびに新規作製に関わる経費が想定したよりも低コストで実施できたことにより,物品費として確保していた経費が未使用のまま残り,次年度使用となった.
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者が,H29年度に実施する系統維持ならびに新規作製に必要な物品費として主に使用する.
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