1.ポリジーン系支配モデルで予想される染色体組成の再現と蛹期間の検証 (1)クワコ単一染色体ヘテロ保持カイコ(大造)系統シリーズの補完と維持:九州大学遺伝子資源開発研究センターでは,クワコ(坂戸産)由来の単一染色体ヘテロ保持大造系統シリーズの系統維持を継続するとともに,欠落していた第19染色体ヘテロ保持系統の作出に成功し,さらにこれまでのクワコ由来のW染色体を有するシリーズに加え,新たにカイコ由来のW染色体を有するシリーズも作出できた.(2)クワコ染色体ホモ接合系統の作製と蛹期間の調査:昨年度作製した3種類のクワコ由来二種染色体ホモ接合系統(第8+18,11+18,15+18染色体)の継代維持ならびに三種染色体ホモ接合系統(第8+11+18,8+15+18,11+15+18染色体)の作製を実施し,それらの蛹期間を調査したところ,二種染色体ホモ接合では大造と比べて蛹期間が平均1日程度延長する弱い効果が認められたのに対し,三種染色体ヘテロ保持では一部の個体の蛹期間が4日程度延長するという,ポリジーン系支配を裏付ける結果が得られた. 2.蛹期間調節に関与する遺伝子群の同定と機能解析 (1)DNA解析による原因遺伝子マッピング: ddRAD-Seq法によるクワコ染色体上の遺伝子マッピング技術の改善により,第18染色体上の新規体色暗色化遺伝子の位置をさらに約450kbpの領域内に限局できた.その中には二つのarylalkylamine N-acetyltransferase遺伝子が含まれていたが,それらの翻訳配列にはクワコとカイコで酵素活性に影響するような差異が見られず,調節領域あるいは他の遺伝子の関与が示唆された.(2)原因遺伝子群の同定と機能解析:三種染色体ホモ接合系統の完成に至らなかったため,ddRAD-Seq法を用いた原因遺伝子の同定と機能解析は今後の課題として残された.
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