研究課題/領域番号 |
15K14900
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
徳田 岳 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (90322750)
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研究分担者 |
松浦 優 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (80723824)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シロアリ / 共生 / セルラーゼ / モノクローナル抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では、モノクローナル抗体を用いたタカサゴシロアリの後腸内バクテリアが生産する木質分解酵素の探索を目的としている。今年度はモノクローナル抗体の作製と並行して実施したタカサゴシロアリの腸内バクテリアが生産するトランスクリプトームデータについて、解析を実施した。その結果、腸内バクテリアは主にキシラナーゼを発現していることが示唆されたため、タカサゴシロアリの消化管における酵素活性測定を実施した。セルラーゼ及びキシラナーゼの間で酵素活性の比較を行ったところ、タカサゴシロアリの後腸内ではキシラナーゼの方が明らかにセルラーゼよりも高い活性を示した。 以上の結果より、これまでに作製したモノクローナル抗体の中からキシラナーゼを認識する抗体をスクリーニングすることで、キシラナーゼを生産するバクテリアの種類と分解酵素作用機序の解明に繋がることが期待された。そこで、後腸内バクテリアが主要に生産するキシラナーゼの発現ベクターを構築し、大腸菌によるキシラナーゼの異種発現を行った。これを抗原として、現在キシラナーゼと反応するモノクローナル抗体のスクリーニングを実施中である。さらに主要なキシラナーゼ遺伝子を発現するバクテリアを同定するために、共焦点レーザー顕微鏡を用いたFISH解析系の構築を試みた。 これまでのところ、まだキシラナーゼと明らかな反応性を示す抗体は見つかっていないが、多くのモノクローナル抗体が大腸菌で生産される20kDa付近の低分子タンパク質と交差活性を示すことが明らかとなっている。モノクローナル抗体作製のための抗原としては多様なバクテリアから構成されるシロアリ腸内から単離した木材付着微生物群を用いており、多くのモノクローナル抗体が単一のタンパク質を認識するのは極めて特異な現象であると考えらる。今後キシラナーゼの探索と並行して、この低分子タンパク質の解析も必要であろうと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タカサゴシロアリの後腸内で主要に働く木質分解酵素を同定し、これに対して反応する抗体のスクリーニングを実施しているという点では概ね順調と考えられる。しかし、多くの抗体が大腸菌の低分子タンパク質に交差反応を示すなど、当初全く予期しなかった結果も得られているため、進捗状況の判断には難しい点もある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、引き続きキシラナーゼと交差反応を示す抗体のスクリーニングを実施する。得られた抗体を用いて、間接蛍光抗体法による腸内容物・微生物叢の観察を行うと共に、FISHによるバクテリアの同定と併せて、キシラナーゼ生産に主要に関わるバクテリアを同定する。 同時に、これまでに抗体が反応している低分子タンパク質についても解析を実施する。このタンパク質がシロアリ腸内で何らかの使用な役割を担っている可能性があり、SDS-PAGE後に標的タンパク質のN末端解析を行うなどして、このタンパク質を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は得られたモノクローナル抗体が認識するタンパク質をある程度網羅的に調べる予定であったが、並行して実施したトランスクリプトーム解析により主要酵素のあたりを付けてからスクリーニングを実施する方が効率的であろうと考えた。従って、発現解析を先行したために、抗体のスクリーニングの開始時期が当初の想定より遅れたことにより、一部の試薬購入等が次年度に繰り越しになった。また、抗体が認識するバクテリアを同定するために、FISHによる解析系の構築を試みているが、予想よりもハイブリ条件の決定に時間を要したため、この点でも一部の予算を次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であるため、早めに抗体のスクリーニングを進めるとともに、FISHによる解析と併せて、主要キシラナーゼを生産する腸内バクテリアの同定を進める。また、当初予想しなかった抗体と反応する低分子タンパク質についてもN末端アミノ酸配列解析などにより、同定を進め、シロアリ腸内での分布状況を間接蛍光抗体法で確認する。
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