本研究では、モノクローナル抗体を用いたタカサゴシロアリの後腸内バクテリアが生産する木質分解酵素の探索を目的としている。今年度はこれまでのスクリーニングによって得られた15種類の抗体のうち、後腸内で主要な役割を果たすことが明らかとなったキシラナーゼと交差反応を示す抗体の選抜を試みると共に、後腸内での抗原の分布を観察した。RNA-seqによって明らかとなった後腸内で高発現しているキシラナーゼ遺伝子をPCR増幅し、大腸菌を用いて強制発現した。His-Tag精製した発現タンパク質に対してウエスタンブロッティングによるモノクローナル抗体のスクリーニングを実施した結果、このキシラナーゼと交差反応を示すモノクローナル抗体が1種類存在することが明らかとなった。大腸菌でキシラナーゼの各領域を発現させ、得られたタンパク質との交差活性を調べた結果、このモノクローナル抗体は主要キシラナーゼの糖結合領域を特異的に認識することが示唆された。間接蛍光抗体法によって腸内容物を観察した結果、主要キシラナーゼはスピロヘータ様の構造をしたバクテリアの一部に由来することが明らかとなった。さらに共焦点レーザー顕微鏡による観察の結果、当初の想定通り、これらのバクテリアは自由生活よりも木片に付着して分布する傾向があることが明らかとなった。本成果により、今後、高等シロアリの後腸における木質分解系の研究を進める上で重要なツールとなり得る抗体を得ることができた。なお、前年度明らかになった一部の抗体が反応する低分子タンパク質についても当初の予定通りN末端アミノ酸配列分析を試みたが、N末端ブロックによって抗原タンパク質を明らかにすることができなかった。その他の抗体についても、現在抗原についての解析を実施中である。
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