研究課題/領域番号 |
15K14904
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片山 新太 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60185808)
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研究分担者 |
粟田 貴宣 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (80724905)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 亜酸化窒素ガス / 生物電気化学培養系 / 細胞外電子伝達系 / 窒素固定 / 硝酸還元アンモニア生成 / 脱窒 / 嫌気脱ハロゲン化微生物 |
研究実績の概要 |
本研究は亜酸化窒素(N2O) を窒素ガス(N2) に還元後、更にアンモニア(NH3)まで還元・固定化する反応系を創成し、反応系の電気化学的な活性化条件を明らかにすることを目的としている。 まず、ペンタクロロフェノール脱塩素菌群による硝酸イオン還元によるアンモニア生成の確認および窒素ガスからの窒素固定活性の確認を行った。次に、ペンタクロロフェノール脱塩素菌群を得た元の土壌を用いて、嫌気培養条件下で還元型固体腐植ヒューミンによる窒素固定活性への影響を調べた。窒素固定活性はアセチレン還元活性で評価した。炭素源として乳酸またはギ酸を加えた無機塩培地中で調べ、乳酸を炭素源とする場合に還元型ヒューミンの窒素固定促進効果が大きいことが明らかとなった。 そこで、窒素固定菌に広く用いられるマンニトールを炭素源とする培地を用いて、もとの土壌の希釈液を嫌気プレート培養してコロニーを得、ストリークにより嫌気性窒素固定菌8株を得た。これらはPaenibacillus属およびClostridium属に属していた。単離株を用いてマンニトール培地中で窒素固定活性をアセチレン還元活性を指標に調べるとともに、窒素固定活性に対する還元型ヒューミンの効果をアセチレン還元活性および培地中の全窒素濃度の増加によって調べたところ、還元型ヒューミンにより窒素固定活性が高まる菌1株を得た。このことは、還元型ヒューミンを電子供与体として働く嫌気性窒素固定菌が存在することを示唆している。 次年度は、窒素固定だけでなく、亜酸化窒素固定の有無とそれに対する還元型ヒューミンの効果を土壌および単離菌で調べる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
亜酸化窒素固定の有無を調べるための検出方法として15Nを用いたトレーサー試験を計画していたが、予想計算に基づけば固定化された亜酸化窒素の15N量が自然同位体比に比較して有意に変化するためには亜酸化窒素のみを含む培養系での評価が必要になることが明らかとなった。そのため、亜酸化窒素固定活性もあると考えられている生物窒素固定反応への細胞外電子伝達物質の効果を中心に調べることにした。その結果、還元型ヒューミンの存在下で活性化する窒素固定反応を有する微生物が存在することが明らかとなった。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は亜酸化窒素(N2O) を窒素ガス(N2) に還元後、更にアンモニア(NH3)まで還元・固定化する反応系を創成し、反応系の電気化学的な活性化条件を明らかにすることを目的としている。研究最終年となる平成28年度では、以下の研究を予定している。 1)還元型ヒューミン存在下でN2O 還元活性および窒素固定活性が高まる微生物群(培養系のガス分析、培養液の窒素含有イオンのイオンクロマト分析、培養液に含まれる有機体窒素分析により評価)を、N2OおよびN2を窒素源、乳酸を炭素源として集積し、その集積微生物群に対する、N2O 還元遺伝子(nosZ)およびN2 固定遺伝子(nifD)の有無を明らかにする。 2)生物電気化学的培養槽を用いて固体腐植ヒューミン存在下、電気供与によって集積微生物群または単離菌の亜酸化窒素からの窒素還元活性および窒素ガスからの窒素固定活性を明らかにするとともに、N2O 還元遺伝子・N2 固定遺伝子の発現が高まるかどうかを明らかにする。一方で、亜酸化窒素および窒素ガスの消費速度(または固定加速度)を明らかにする。この結果と窒素還元に関わる電気供与率の関係を明らかにする。 以上から、亜酸化窒素および窒素ガスの生物電気化学的制御の可能性を明らかにする。
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