平成27年度に引き続いて単一細胞を分取する方法ならびにそこからDNAを取り出し増幅する方法の開発を行った。平成27年度までの検討に加えて、(1)レーザーマイクロダイセクションによる単一細胞分取 (2)マイクロマニピュレーターによる細胞分取についても検討を行なった。レーザーマイクロダイセクションについては、乾燥した状態では蛍光が微弱になるためシングルセルを分取することが非常に困難であることがわかった。一方で、フロックやバイオフィルムなどある程度まとまった細胞群を分取する上では有用なツールとなることがわかった。将来的には、環境中の細胞クラスターなどをサンプリングしDNA解析、ビンゲノムの構築を行うストラテジーが可能である。マイクロマニピュレーションは液体中で実際にサンプルを目視しつつ分取が可能であり、ガラスキャピラリーの挿入による錯乱を最小限にすることで単一細胞を分取することが可能であった。ただし、分取のためにはかなりの時間が必要であるため、糸状性の細菌など形態をもとに細胞を分取する用途に適していることが示唆された。 平成27年度から行なっているセルソーターによる細胞の分取に関しては、ハイスループットである一方、分取した細胞が実際に反応ウェルに入っているのか確認できないため分取を妨げる静電気等の影響を排除することが必要である。そのため、金属製の反応プレートを用いてきたが平底の形状に問題があり、MDS反応中に反応液が蒸発・減少してしまう問題が生じていた。平成28年度は新たに丸底のメタルプレートを作成し、さらに表面に疎水性のコーティングを施すことにより、反応溶液の蒸発を防ぐことが可能となった。また、MDA反応条件の最適化も行い実サンプルからソーティングした単一細胞から効率的にDNAを増幅することが可能となった。
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