研究課題/領域番号 |
15K14908
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
赤澤 宏樹 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (30301807)
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研究分担者 |
川口 将武 大阪産業大学, デザイン工学部, 講師 (30298814)
上田 萌子 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員 (10549736)
大平 和弘 兵庫県立人と自然の博物館, その他部局等, 研究員 (90711169)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 街路樹 / 維持管理 / 市民要望 / テキスト分析 / 剪定 |
研究実績の概要 |
大阪府東大阪市の街路樹に対する市民要望カード(2012年度:171件,2013年度:176件)をテキストデータベース化し,テキストマイニングソフトを用いた質的分析を行った。 重要キーワードの抽出およびそれらの関係性のマッピングの結果として,上位15の重要キーワードが4~5のカテゴリに分類され,多様な業務の中で個々の行政担当者による記録に頼らざるを得ない状況を踏まえても,比較的簡易なテキスト分析で市民要望の全体像を把握できることが明らかとなった。本研究で採用した手法を用いて,重要キーワードの抽出とマッピングを簡易に行うことができ,今後の市民要望の把握とそれを踏まえた街路樹の維持管理方針の立案に有益であると考えられる。加えて,本研究で採用した手法によって,具体の内容の差異が年度間でも読み取れることがわかった。本研究ではデータの制約上,2つの年度データ間での比較しかできなかったが,データの蓄積さえ行われておれば10年や30年といった樹木の生長スパンでの市民要望の比較検証が可能となる。数年で異動することが多い行政職員にとって,このように中長期に渡った街路樹への市民要望の傾向とそこからわかる街路樹管理の課題が把握できることは,中長期的な根拠と展望を持った維持管理計画策定に寄与するものと考える。 これらの結果を地域住民と共有することで,数年で異動することが多い行政職員にとって,中長期に渡った街路樹への市民要望の傾向とそこからわかる街路樹管理の課題が把握できる素材となり,中長期的な根拠と展望を持った維持管理計画策定に寄与するものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画していた,街路樹に対する市民要望の質的分析,および街路樹に関する市民要望の記録方法の検証については,おおむね終えることができた。本年度の結果をもって平成29年度に市民要望の記録方法について自治体ヒアリングを実施すべく,継続して結果の整理とヒアリングシートの検討を行う。 加えて,平成28年度に予定している市民要望の街路樹景観への影響評価について,東大阪市で一部のデータを収集し,分析を試行した。街路樹の植栽タイプ,架線の有無,車道幅員,歩道幅員,周辺土地利用,市民要望の有無を用いた多変量解析ではデータ全体を説明できる結果が得られなかった。データの追加収集を行いつつ,土地利用データの細分化など街路樹管理に影響を与える要因の検証を進めつつ,街路樹景観の評価指標を検討する。 また,平成28年度に予定している協働による街路樹景観育成計画の枠組みの基礎調査について,対象事例の収集も進めている。現時点では,国内事例として市民・NPO・事業者との協働を街路樹景観整備計画に明記している大分県大分市,市民から街路樹の協働による育成に関する意見を募っている長野県伊那市,街路樹のあり方として「地域との連携による再生計画と育樹」を答申した愛知県名古屋市,街路樹指針において区民協働を掲げた東京都江戸川区,協働事業として「街路樹キーパー」を市民から募集している東京都日野市を想定している。海外事例としては,街路樹の植栽から管理まで行政・NPO・地域住民が連携して行っている米国サンフランシスコ市,シアトル市,フィラデルフィア市等を想定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に予定している市民要望の街路樹景観への影響評価については,データの追加収集を行いつつ,土地利用データの細分化など街路樹管理に影響を与える要因の検証を進めつつ,街路樹景観の評価指標を検討する。特に街路樹景観の評価指標については,単純に街路樹の大きさで判断せず,自治体毎の維持管理目標の把握や,総合計画で目指しているまちづくりの質など,街路樹の価値から定めることを目標とする。 協働による街路樹景観育成計画の枠組みの基礎調査については,担当の1人が28年度に米国滞在するメリットを活かし,調査対象の海外事例比率を増やし,より詳細な調査を行うことを検討する。米国には多数の街路樹管理を支援する組織が存在し,街路樹にPrivate TreeやNeighborhood Forestが含まれるなど区分も多様であるため,計画当初よりより充実した調査が実施できると考えられる。 最終年度となる29年度に向けては,27年度および28年度の成果を基にして,自治体の担当部局職員にヒアリング調査を実施し,市民要望を適切に分析でき且つ実務の用に耐えうる街路樹の維持管理システムを提案する。具体には①中長期的な街路樹景観のあり方を行政・市民で共有し,②専門的な街路樹の維持管理は行政が担いつつ,③個別の市民要望ではなく地域の総意に基づいて協働の景観育成を行う指針を示す「街路樹景観育成計画」を提案することを想定しているため,そのためのヒアリング手法の開発や研究会の運営などについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ提供元の自治体との交渉が効率的に進み,メールや郵送での依頼・受取・返却で済ませることができたことによって,想定よりも交通費を事例収集の予備調査にあてることとした。一方で事例収集の予備調査は,事例自治体の年度末の対応が困難なために進捗に遅れが生じ,調査が満足に実施できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,主に28年度に本調査を計画している「協働による街路樹景観育成計画の枠組みの基礎調査」の交通費として使用し,本研究にて提案する街路樹景観育成計画の参考事例を多数収集する。
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