研究課題/領域番号 |
15K14910
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研究機関 | 国立研究開発法人 農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
金田 哲 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (00537920)
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研究分担者 |
米村 正一郎 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (20354128)
藤井 一至 国立研究開発法人 森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (60594265)
櫻井 玄 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (70452737)
和穎 朗太 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (80456748)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミミズ / 炭素動態 / 団粒形成 / 安定同位体分析 / 粘液 / 粘土鉱物 |
研究実績の概要 |
二酸化炭素上昇による地球温暖化や土壌炭素減少による土壌劣化の観点から、土壌炭素動態の解明は極めて重要である。しかし、未だ土壌炭素動態は十分に解明されていない。ミミズは土壌炭素動態に強く影響を及ぼす(摂食することで炭素の放出を促進する一方、団粒を形成することで団粒内の有機物分解を遅延させる)が、実験期間の問題やメカニズム研究の停滞によりミミズが炭素を放出するか蓄積するか、どちらに働くか明らかになっていない。そこで、本課題ではミミズが炭素動態に及ぼす影響を解明するため、1)ミミズが有機物分解速度に及ぼす影響を長期培養から評価するとともに、2)土中の各炭素画分の炭素動態の解明、3)団粒中糖類組成の変化、4)粘土鉱物による有機物安定化機構の解明に関する研究を進めている。1)ミミズが有機物分解速度に及ぼす影響を評価する長期培養実験では、定期的に土壌呼吸速度を測定するとともに、実験開始2年後に回収したサンプルの土壌炭素濃度を測定した。その結果、ミミズは2年後において統計的に有意に有機物分解を遅らせることが明らかになった。2)土中の各炭素画分の炭素動態の解明では、測定装置の安定性が悪いため調整を行った。3)団粒中糖類組成の変化を評価する試験では、ミミズから粘液を抽出し糖類組成を分析したが既存の方法では上手く抽出できないことが明らかとなった。現在新たな抽出方法を確立中である。4)粘土鉱物による有機物安定化機構の解明に関する研究では、実験に用いる基質を検討し次年度の実験に備えることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最も重要な長期培養試験は順調に進んでいるものの、団粒中糖類組成の変化を調べる実験では、既存の方法を用い抽出を試みたがモデル生物のサクラミミズでは低濃度となり十分には粘液を抽出できていないことが明らかになった。種によって粘液浸出量が異なることが考えられる。本種においては個体が小さいため、より多くのミミズから粘液の抽出が必要となる。今後はさらに抽出液に対するミミズ重量の比率を高めることで抽出できるようにする。また、本種は小さい個体のため、土壌団粒中の粘液も少ないと考えられることから、本種が形成する土壌団粒からの抽出も新たに開発する必要がある。CO2 安定同位体の連続測定機器のエアロダイン社製のレーザー分光CO2安定同位体比計の安定性が悪く、2)土中の各炭素画分の炭素動態の解明に関する研究が止まっている。
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今後の研究の推進方策 |
団粒中糖類組成の変化を調べる実験では、ミミズを高密度で抽出液中に浸出し、粘液を回収すると共に、土壌団粒からの粘液の抽出法を新たに開発する。連続測定機器のレーザー分光CO2安定同位体比計の調整を行いつつ、代替の分析法を検討し、場合によっては測定法を切り替え、実験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2)土中の各炭素画分の炭素動態の解明と3)団粒中糖類組成の変化に関する研究が、分析機器の不安定化や既存の方法で粘液が抽出できなかったことにより実験が停滞し、それらの実験に関連する分析が行えなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
分析機器の調整が難航する場合、新たな手法に切り替えることで土中の各炭素画分の炭素動態の解明に関する実験を開始する。研究全体を想定より短期間で遂行するため、新たに契約職員を雇用し効率的に研究を進める。
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