研究課題/領域番号 |
15K14911
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 敬悦 東北大学, 農学研究科, 教授 (50312624)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 輸送体 / 物質生産 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
1. AAEx輸送体の基質輸送制御の解析 平成27年度に確立したAspTの高発現・大量精製方法により高純度AspTを得られるようになった。高純度AspTを用いて等温滴定法によるc-di-AMPを含む各種リガンドの結合定数解析を試みたが、AspTの熱安定性の低さと各種リガンドの低親和性から結合定数の決定に至らなかった。そこで、精製AspTを各種リガンド共存下で熱処理した後、AspTのトリプトファン蛍光を検出する蛍光ゲルろ過クロマトグラフィー(FSEC)を用いて未変性AspTピークの定量を行って、安定化リガンドを決定した。その結果、基質L-Asp, L-Ala, に加えNaイオンが熱安定化リガンドであることが明らかとなった。またpH5条件が熱安定化要因であった。同様に他のAAEx輸送体でもFSEC法による熱安定化リガンドの探索法を確立した。 2. AAEx輸送体の結晶化と立体構造解析 AspTの立体構造解析:Aで見出した安定化リガンドNaイオン系の緩衝液系を用いて結晶化条件の探索を行ったが未だ構造解析に良好な結晶は得られていない。そこで、結晶が得られなくても構造解析が可能なクライオ電子顕微鏡による構造解析を開始したところ、ダイマーを機能単位とする画像が見えており、クライオ電子顕微鏡での解析が有望であることが明らかになり、引き続き構造解析を進めているAspTで確立したクライオ電子顕微鏡による構造解析関連の各種方法論は、他のAAEx輸送体へも適用可能と思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. AAEx輸送体の基質輸送制御の解析 AspTにはITC法が適用できなかったがFSEC法を用いることで、AspTの熱安定化条件の探索に成功した。AspT熱安定化リガンドのNaイオンは、AspTの輸送反応サイクルのうちのどこかの段階でAspTを安定化させると考えられ、構造解析に適することが明らかになった。 2. AAEx輸送体の結晶化と立体構造解析 1で見出したAspTの熱安定化条件を用いて、結晶化スクリーニングを行っているが未だ構造解析に適した結晶はえられていない。しかし、熱安定化緩衝液条件でのクライオ電子顕微鏡観察により、AspT分子がダイマーを機能単位とする良好な画像が得られた。平成28年度は途中にキャンパス移転があり、研究が4カ月停止したため、当初計画より遅れが生じたため、構造解析が完了しなかった。クライオ電子顕微鏡で構造が見えてきているので、平成29年度も、構造解析を継続する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度途中にキャンパス移転があり、研究が4カ月停止したため、当初計画より遅れが生じたため、構造解析が完了しなかった。そこで、平成29年度は構造解析を含む以下の研究を継続する。 1. AAEx輸送体の基質輸送制御の解析 AspTのクライオ電子顕微鏡解析が軌道にのってきたので、TrkA_Cドメインへのリガンドと思われるc-di-AMP共存下の電子顕微鏡構造解析を進める方針に変更する。またFSECでのc-di-AMP安定化評価も行う。 2. AAEx輸送体の結晶化と立体構造解析 AspTの構造解析ではクライオ電子顕微鏡が有効であることが明らかになったので、継続して構造解析を進めて、AspTの立体構造を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の後期にキャンパス移転があったが、輸送体の変性構造解析に使用する蛍光LC装置および、放射性同位体を用いる輸送体輸送活性測定機器類の移設後の組上げ・調整に想定以上の時間を要した。このため当該機器を使用した解析を平成28年度内に実施することが不可能となったため、平成29年度まで期間を延長して研究を実施する。
|
次年度使用額の使用計画 |
AspTタンパク質構造解析のための蛋白質精製用試薬類の購入に使用する。
|
備考 |
研究と業績の紹介が記載されている。
|