研究実績の概要 |
アカパンカビは、Repeat-Induced Point mutation (RIP)と呼ばれる特殊なゲノム防御機構を持つ。RIPは生殖期にゲノム上の重複配列を認識し、両方の配列を高頻度に塩基置換させる。しかし、RIP発見から約30年経つが、RIP現象を解析する手法はほとんどない。本研究は、RIP研究の基盤となりうるRIPの重複配列探索(Pairing)とDNA配列変異(RIPing)を顕微鏡下で捉えるRIP可視化システムの構築を目指している。前回、種々の蛍光蛋白質から緑色ではmNeonGreen、赤色ではTagRFP-Tがアカパンカビにおいて長時間ライブイメージング用として選び出し、これらのコドンを最適化した。一方、LexA DNA結合ドメインの融合蛋白質(Honda et al, PNAS, 2016)は、アカパンカビにおいても機能するが、この結合配列(lexAop)の単純な繰返しを使用すると、アカパンカビが有するゲノム防御システムであるヘテロクロマチン化が発動し、この配列へのアクセスが阻害される。そのため、天然の異なる9つのlexAopを「1ヌクレオソーム長146bp」毎に配置した人工配列をデザインし直した。また、RIP可視化システムの構築を成功させるための鍵となる適切なプロモーターとして、アカパンカビのテロメア末端にある短い繰返し配列(約20回)を認識する蛋白質群Shelterinのプロモーターに着目した。そこで、Shelterinの構成蛋白質を上記で最適した蛍光蛋白質とそれぞれ融合させ、観察した結果、その一つのRAP1がもっとも蛍光シグナルを発することを見出した。そして、このRAP1プロモーターと新たな人口配列を組合せた形質変換株を作製したが、残念ながら特定な染色体領域を顕微鏡下で生きたまま可視化することはできなかった。
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