研究課題/領域番号 |
15K14917
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉田 護 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (70154474)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RNA結合タンパク質 / 植物オルガネラ / PPRタンパク質 / ヒメツリガネゴケ / RNA編集 / RNA調節酵素 |
研究実績の概要 |
葉緑体とミトコンドリアの遺伝子発現をRNAレベルで調節する新しい実験技術を開発するための基礎研究として、pentatricopeptide repeat(PPR)タンパク質のRNA結合モチーフを改変したカスタムPPRタンパク質をデザインし、標的部位における「RNA編集」への影響を評価した。27年度は以下のことを明らかにした。
カスタムPPRタンパク質のモデル分子として、2カ所の部位(nad3-C230とnad4-C272)のRNA編集に機能するPpPPR_56を用いた。RNA編集PPRタンパク質はP, L, S の3種のモチーフで構成されているが、これまでの先行研究により、PモチーフとSモチーフの2カ所のアミノ酸殘基の組み合わせで1塩基を認識するが、Lモチーフは塩基認識に関わっていないと考えられていた。本研究では、PLSタイプPpPPR_65のPPRモチーフのアミノ酸殘基を置換した様々な変異PPR65を作製し、これをRNA編集変異株で発現させて、標的部位のRNA編集効率を定量した。その結果、2カ所のRNA編集部位のどちらか一方あるいは両方に作用する様々なカスタムPPR56をデザインすることに成功した。また、PpPPR_65の12個のPPRモチーフのうち、C末端に位置するLモチーフが編集部位認識に重要な寄与をしていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)当初の目標である2カ所のRNA編集部位の両方あるいは一方を編集するカスタムPPR56をデザインすることに成功した。これにより、RNA編集の鍵となるPPRモチーフの位置とcriticalなアミノ酸殘基を推定することできた。 (2)葉緑体のtRNAイントロンに結合する新規のPPRタンパク質を同定し論文発表した(Goto et al. Plant J. 2016)。この成果を基盤として、本来の標的RNAとは異なるRNA配列を認識する任意のPPRタンパク質をデザインすることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今年度デザインしたカスタムPPR56がRNA編集部位を含むRNA分子に結合するかどうかを、electrohoresis mobility shift assay (EMSA)法で定量し、RNA結合とRNA編集の対応関係を明らかにする。 (2)カスタムPPR56で得られた結果の普遍性を検討するため、RNA編集因子PpPPR_71についても同様の解析を行う。 (3)PPR56とPPR71のC末端にRNA切断活性ドメインを付加したPPRタンパク質をデザインし、これを野生株またはRNA編集欠損変異株に導入し、標的RNA分子が切断されるかどうかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の成果を今年度3月に開催された日本植物生理学会年会で発表したが、その旅費を学内経費(リーデイングプログラム・国内旅費支援)で充てた。そのためその分が節約でき差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費としてカスタムPPRタンパク質の調製とRNA結合実験に必要な分子生物学試薬、プラスチック器具、アイソトープ、RNAプローブ、オリゴDNAを購入する(120万円)。繰り越し分を物品費の一部として使用する。国内旅費(10万円)を使用予定である(日本植物生理学会年内、鹿児島開催)。PPRタンパク質の調製のための実験補助として謝金(20万円)と英語校閲と論文掲載料(40万円)を使用予定である。
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