研究課題/領域番号 |
15K14919
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増田 誠司 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20260614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CHERP / 選択的mRNAスプライシング |
研究実績の概要 |
mRNAの選択的スプライシングは、ゲノムにコードされる遺伝子の数を遙かに超えた数のタンパク質を発現させるメカニズムであり、生物進化を理解する上でも重要な研究課題となっている。しかし、ヒトにおける選択的スプライシングの分子機構は十分にわかっていない。報告者は、ヒトにおける選択的スプライシングを新規因子CHERPが新たな分子機構により制御することを見いだした。本研究は、CHERPの制御する遺伝子を網羅的に解析するとともに、CHERPによる選択的スプライシングの新規原理を提示する。加えて、ヒト遺伝病の約20%で生じるmRNAスプライシング異常に伴う難治性疾患の分子標的としてのCHERPの有効性を評価する。同時にCHERPによるCaシグナリングを介した選択的スプライシング制御の可能性を評価する。 CHERPがmRNAスプライシングのどの段階に作用するのかを調べるために免疫沈降と質量分析から相互作用タンパク質の同定を行った。Flagタグを入れたCHERP安定発現株から調整した核抽出液と抗Flag抗体を用いてCHERPの相互作用因子を免疫沈降した。質量分析の結果、CHERPは3’スプライス部位の認識や決定に関わるU2snRNPやU2AFタンパク質と強く相互作用することを見出した。CHERPはスプライシングの初期段階に関わることが示された。またCa2+付加により相互作用する因子が変化し、翻訳やmRNA輸送に関わるタンパク質との相互作用を確認した。加えて、Ca2+付加によりSRタンパク質、リボソームやヒストンの相互作用が特異的に見られた。以上、CHERPと相互作用する因子の網羅的解析を完了し、U2snRNPやU2AFタンパク質と強く相互作用すること、Ca2+付加により特にリボソームやヒストンの相互作用が特異的に見られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.CHERPと相互作用する因子の網羅的な解析に成功した。 2.CHERPと相互作用する因子がCa2+付加により変化することを明らかにした 3.遺伝子発現の網羅的な解析に必要なRNAサンプルの調整を完了した。 以上の成果から、計画は順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、以下に記した内容を行うことにより、CHERPによる選択的mRNAスプライシングの分子メカニズムを明らかにするとともに遺伝病との関係についても文献調査を中心に進めていく。 1.CHERPによるmRNAの選択的スプライシングを受ける遺伝子の網羅的解析 2.PAR-Clip法によるCHERPの結合RNAの解析 3.CHERPの結合RNA配列の解明 4.CHERPによる選択的スプライシング制御機構の解明 5.Ca濃度に依存したCHERP相互作用因子の網羅的解析と選択的スプライシングとの相関関係の解明
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子発現の網羅的解析を行うためにNGSあるいはエキソンアレイの購入を予定していた。時期的に年度内の解析が困難となったため新たな年度で解析することとした。このため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の大部分については、NGSあるいはエキソンアレイを用いた解析に使用する。
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