研究課題
質量分析イメージングを再現性良く高感度に行うためには、マトリックス塗布法の最適化が重要となる。これまで一般的に用いられているスプレーコーティング法は高感度な分析が可能である一方、試料表面にマトリックスの大きな結晶が形成されるために空間分解能の低下が起こる。また、真空下でマトリックスを昇華させて試料表面に蒸着させる蒸着法では、極めて均一なマトリックス層を形成するため高分解能イメージングが可能である一方、有機溶媒を用いないために試料から分析対象物質の抽出が起こらず極めて低感度である。我々は蒸着法にて作成した試料に極穏和な条件で溶媒蒸気を供給することで、高感度かつ再現性の高いマトリックス塗布法の開発に成功した。本手法で作成した試料表面は電子顕微鏡で観察しても蒸着法で作成した試料と比較して変化は見られないため、高分解能イメージングも可能であることが明らかとなった。また、スプレーコーティング法よりも高感度な測定が可能であることも明らかとなった。新たに開発した質量分析イメージングにおけるサンプル調製法の最適化技術を用いて、トマト果実内における代謝動態の可視化に成功した。特に、傷害を与えた果実の傷害部位に特異的にトマチンが蓄積し、傷害部位における更なる外敵の侵入を防ぐ機構が存在することを明らかとした。現在シロイヌナズナ葉のサンプル調製法を開発しており、葉内部組織におけるグルコシノレート等の防御物質の代謝動態解析に取り組んでいる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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