研究実績の概要 |
「極限環境微生物」の一種である高い塩分濃度を好む好塩菌は、熱や有機溶媒等の変性作用に耐性で、通常のタンパク質では不可逆的に凝集し変性してしまう状況でも、高い可溶性を示し、凝集せず、可逆的に活性と構造を回復するという産業利用にとって極めて有用な特徴を持つ「タフなタンパク質=好塩性タンパク質」を生産する。このタンパク質は一般的にマイナス荷電を大量にもった酸性タンパク質である。災害や排水などにより環境中に放出された重金属は環境汚染における重大な問題であり、これを補集・再利用すれば、環境保全とともに、資源に乏しい我国において有用な資源となりうる。本研究は、このような社会的背景のもとに、好塩性菌と好塩性タンパク質による新しい環境修復と重金属回収法の開発をめざした。 好塩性細菌のペリプラズムに局在するHPタンパク質(Histidine-rich metal binding protein, HP)は、多量の重金属を結合すると考えられたので、HPタンパク質とその配列の中で複数の重金属を結合すると推定された「高ヒスチジン(High-His)領域」を様々な方法で分離し、金属結合アフィニティカラムへの結合を確認した。次に、固定化カラムを作成してNiイオンの結合効率を測定したところ、His-HPタンパク質1分子に約9個、High-His領域に約2個のNiイオンが結合した。次により安価でシンプルな系として、好塩菌やHPを高発現させた大腸菌の固定化菌体を用いて、Niイオンの結合量を調べたところ、1リッター培養菌体あたり、好塩菌は8.1 mg、HPを高発現させた大腸菌は、9.6 mgを結合し、対照実験の大腸菌菌体に比べ、5~6倍量のNiイオンを結合した。
|