本研究は、イネ種子に存在するプロテインボディをヒトや家畜の消化管へのドラッグデリバリー用のマイクロ容器として利用を目指す挑戦的な研究である。 申請者はイネ種子中に存在するプロテインボディ-I(PB-I)に内在性プロラミンが蓄積する仕組みを詳細に解析してきた。本研究はその仕組みに新しい技術を追加し、医療用タンパク質をPBの特定領域へ局在化し、ヒトや家畜の消化管へドラッグデリバリーすることで、少量で効果の高い薬品用マイクロ容器を創出する事を目的とする研究である。 本年度は、医療用タンパク質のモデルとしGFPを用い、アミノ酸配列の相同性が高いが、PB-I内部におけるプロラミンの局在性が異なる13-a prolaminと13-b prolaminのコード配列を用いて、それぞれのプロモーター配列が逆になるようにデザインした。即ち、13-a prolamin プロモーター下流に13-b prolaminのコード配列とGFP融合タンパク質を発現する様に、また、13-b prolamin プロモーター下流に13-a prolaminのコード配列とGFP融合タンパク質を発現する様に、それぞれ組換えイネを作出し、種子胚乳内のPB-I中に局在するプロラミンミニマム配列を調査した。その結果、13-a prolaminと13-b prolaminのコード配列に関わらず、13-a prolaminプロモーターを用いると中間層に、13-b prolamin プロモーターを用いると最外周層に融合タンパク質が局在することが明らかになった。 3年間の研究結果から、医療用タンパク質をPBの特定領域へ局在化するためには、プロラミンのプロモーター配列が重要であり、PB-Iの中に安定に蓄積させるためにはある程度の長さのプロラミンコード配列が必要であることが明らかになった。
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