研究課題/領域番号 |
15K14927
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大和田 智彦 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20177025)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 隣接基関与 / 窒素カチオン / オキシム |
研究実績の概要 |
ハロニウムイオンを最初の例として提案された隣接基関与の現象は、炭素以外のプラス電荷を持つ原子、例えば窒素カチオンなどにも存在すると考えられ、有機化学において隣接基関与の概念の普遍性の高さは疑いのないものとして受け入れられてきた。しかし意外なことに現在に至るまで炭素カチオン以外においてハロゲン原子の隣接基関与の存在や関与の明確な証拠は一切示されていなかった。本研究者らは、ブレンステッド酸を用いるベックマン転位反応条件下でオキシムの新規な転位反応を発見し、ハロゲン原子が炭素原子以外の電子欠乏性の原子との間で結合を生成し新しい隣接基相互作用を起こすことを提案した。すなわち、近傍に位置するハロゲン原子と窒素カチオンの間に新しいハロゲンー窒素結合が存在する可能性を提唱した。窒素カチオンと隣接する原子および原子団との相互作用(新化学結合)の実証と一般性、期待される新転位反応の応用性のポテンシャルを調査するのが本研究の目的である。本年度では(1)現在報告した新しい転位反応が5員環遷移状態を取るのに対して6員環中間体を経由する隣接基関与の可能性の検討した。その結果可能性の一部を示せた。(2)またペリ位ハロゲンの隣の補助基によりN-ハロゲン結合が安定化されアルキル転位反応が促進される可能性について検討した。またの中間体の直接観測 を行った。これは実際起きる。今後は特に論文化を考え、(2)の反応性の詳細なデータを集めまた(1)ではより収率改善を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)6員環中間体を経由する隣接基関与の可能性の検討の成果について学会発表した。また、(2)補助基による安定化により超原子価ハロゲン構造(特に臭素(4’-Br)、塩素、フッ素)の反応の変化と中間体の直接観測 を行った成果を論文化に着手し、また学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)6員環中間体を経由する隣接基関与の可能性の検討について,さらに視点を変えて検討するとともに、(3)アルキル転位における不斉炭素の立体化学の研究 (4)飽和炭素系での窒素カチオンへの隣接基関与の可能性の調査を行う予定である。(1)については実施して、確かに6員環中間体を経由する隣接基関与の可能性はある事が解明されつつあるが、収率の低さが問題である。
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