研究実績の概要 |
炭素-窒素結合形成反応(アミノ化反応)によるN-無保護α-アミノ酸の合成法の確立を目的として検討を行なった。本反応の特徴は以下の通りである。 1.デザイン型カルボン酸誘導体を用いることで、事前活性化が不要で変換反応も容易となり、従来法と比較して全合成プロセスの反応工程数の削減が可能 2.従来法では適用困難であった、反応性の高いケトンやアルデヒド等の官能基存在下、目的の反応を化学選択的に進行させることが可能(化学選択性の逆転) 3.アミノ基保護(一級アミン)のα-アミノ酸誘導体を直接得ることが可能 触媒的な、直接無保護アミノ基導入反応は、報告例の無い新規反応である。また本コンセプトは他の多くの反応開発へと適用可能で、有機合成化学分野におけるイノベーションを促進させるものである。 目的に適したデザイン型カルボン酸誘導体の探索、Synergistic CatalysisとしてLewis酸(エノラート化)/遷移金属(ナイトレノイド生成)協働触媒系の探索を行い、二座配位型のデザイン型カルボン酸誘導体の特徴を生かし、他の高反応性のカルボニル化合物共存下において、デザイン型カルボン酸誘導体のα位選択的にアミノ化反応を進行させる条件の探索を行った結果、カルボン酸等価体として二座配位可能な活性アミドである3,5-位にMe基を有するアシルピラゾールが最適であることを見出し、触媒としてCu(OTf)2を、窒素化試薬として金属カルベノイド種を生成可能なPhI=NTsを用いる触媒系を開発することに成功した。本触媒系の最も特徴的な性質は、分子内にケトンや、さらに酸性度の高いα位水素を有するニトロ基などの官能基が存在しても、アシルピラゾールのα位選択的にアミノ化反応が進行する点であ理、基質の酸性度を触媒によって逆転可能であることを示した重要な研究であると自負している。
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