研究課題/領域番号 |
15K14931
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
椿 一典 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50303897)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 異常反応 / 二量化 / フェナレノン / 転位反応 / エネルギー移動 |
研究実績の概要 |
研究を通じて見出した異常反応の反応機構の解明とその発展を目指して研究を行っている。このうちキサントンとキサンテンが直結した蛍光色素の研究については、そもそも、どのような基質の場合に、異常二量化が進行するのかを検討した。その結果、二種類のキサントンの場合に限って、異常二量化が進行することが判った。またこの異常二量化体はキサントン部位からキサンテン部位へ(これらはお互いに直交しているにも拘らず)エネルギー移動がおこり、その効率は溶媒に依存することが判っている。なぜそのような、直交したπ系間にエネルギー移動が起こるのか、その要因を一つひとつ精査した。その結果、基底状態ではほぼ直交している二つのπ系が、励起状態ではねじれ、直交系からずれるためと結論付けることができた。さらにこの研究の最中に、新たな異常反応を見出すことができた。 ジアリールケトンの酸触媒下でのフェナレノン骨格形成反応については、重水素を用いた標識実験により反応の概要が明らかになりつつある。当初、この反応は途中に中間体を経由すると想定していた。これは反応を途中で停止した際に、原料や生成物でもない構造不明物が得られるためであったが、どうやらこの化合物は中間体ではなく、反応停止に用いた水が反応した化合物であると思われた。直接的な中間体ではないにせよ、その構造の決定は、反応機構解明の手がかりになるはずであり、現在もその単離構造決定を進めている。また本異常反応については、計算化学からの理解も進めており、合理的な反応機構を提唱できそうな段階にまで研究を進めることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究課題である三つの異常反応のうち、一種類については決着し論文の形で報告することができた。さらにフェナレノン骨格をあたえる以上転位反応も、全体像がほぼ解明できており、報告も近いものと考えている。それに加えて四つ目の異常反応も見出すことができ、この部分については既に論文の形で報告することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
フェナレノン骨格を与える転位反応については、反応機構を明らかにすると同時に、基質適用性を検討する。フェナレノン骨格は常温で安定なラジカルを与えること報告されている。より簡便に多種多様なフェナレノン骨格を合成し、機能化などを精査したい。またベンズテトラセンを与える反応もその反応の中身を検討するため、最適基質の合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ研究計画どおりの進展であり、全額有意義に消費する予定であったが、謝金の部分で若干の誤差を生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬購入費に当てなおし、より有意義に使用する。
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