研究課題
本研究課題では,補酵素S-adenosylmethionine(SAM)の蛍光による定量系を開発し,メチル基転移酵素(メチルトランスフェラーゼ)の酵素活性検出系を開発すること,また,メチルトランスフェラーゼの阻害剤を,大規模化合物ライブラリを利用したスクリーニングにより取得することを目的として進められてきた.初年度の段階で,本研究の主体となる蛍光プローブの開発に成功し,更にその構造展開により,高感度のSAM定量が可能な実験系,実験条件を確立することを達成した.更に,これを用いたメチルトランスフェラーゼ活性の広範な検出系を開発し,各種ヒストンメチルトランスフェラーゼの活性を本システムによって評価できることを確かめ,これらの研究成果について学術論文を投稿した.また,メチルトランスフェラーゼの阻害剤開発に関しては,近年癌化との関わりが明らかにされた酵素protein L-isoaspartyl methyltransferase(PIMT)について,スクリーニング系を構築し,東京大学創薬機構が保有する20万化合物のうちから有用な阻害剤候補化合物を取得しており,これらのヒット化合物より構造展開を実施し,新たな抗癌剤候補リード化合物を取得できることが期待される.これらの研究成果より,本研究は当初の予想以上のペースで進行していると言え,次年度以降は,これらの成果を発展させる形で新たなSAM定量系およびメチルトランスフェラーゼの活性検出系の開発を進めると共に,スクリーニングによる更に有用な酵素阻害剤の取得,構造活性相関の精査による研究の高次系への展開を図る.
1: 当初の計画以上に進展している
上述のとおり,研究の初年度の段階で,高感度のSAM定量システムおよびこれを用いたメチルトランスフェラーゼの活性検出系の開発という本研究の主目標を達成することができたことから,本研究は予想以上に進展していると判断した.次年度以降は,これらの成果を更に発展させることに注力していくことができると期待される.
本研究で開発したSAMの定量系を,生体サンプル中のSAMの検出およびより広範なメチルトランスフェラーゼ活性の検出に展開していくため,更に高感度にSAM濃度を定量できる仕組みの開発を目指す.これは,現在用いている蛍光プローブの更なる構造の精査,あるいは,新たな分子設計に基づく蛍光プローブの開発によって達成可能であると期待される.ここでの新たな分子設計とは,現在用いている酵素PIMT,Caspase-3と基質のペアによってSAMを定量するシステムを,新たな酵素‐基質ペアを利用することでより迅速,高感度な検出系へと発展させることを意味する.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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