研究課題/領域番号 |
15K14939
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西川 元也 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40273437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核酸 / DNA / ハイドロゲル / 経口投与 / キトサン |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患に対する核酸医薬による治療システムの開発を念頭に、消化管内での核酸の分解と、炎症性腸疾患の標的となる消化管下部への効率的送達の問題を解決する方法として、申請者らが独自に開発した「自己ゲル化核酸」技術を利用してキトサン被覆DNAマイクロゲル製剤の開発を試みた。平成27年度は、基本DNAユニットとして6本足のhexapodnaを選択し、2種類のhexapodnaを混合することでDNAハイドロゲルを作製した。このとき、Toll-like receptor 9(TLR9)のリガンドであり、代表的なフォスホロチオエート化CpGオリゴヌクレオチド(ODN)であるCpG1668を核酸医薬として選択した。Hexapodnaを構成するODNの末端部分をCpG1668相補的な配列とすることでhexapodnaにCpG1668を結合した。TLR9を発現するRAW264.7細胞に添加したところ、CpG1668結合hexapodnaはCpG1668単独と比較して効率よく取り込まれた。また、これにより細胞からのTNF-αの産生も有意に増大した。次に、2種類のCpG1668結合hexapodnaを混合し、CpG1668内包DNAハイドロゲルを作製した。その結果、CpG1668はDNAハイドロゲルに安定に組み込まれ、徐放されることが示された。CpG1668に相補的な配列を含まない場合にはCpG1668はhexapodnaに結合せず、DNAハイドロゲルから速やかに放出された。CpG1668内包DNAハイドロゲルの投与部位での安定性を評価することを目的にマウス膣内に投与した。その結果、CpG1668単独と比較してDNAハイドロゲルに内包することで、CpG1668が長期間投与部位に滞留することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたパルスインジェクターを利用したDNAハイドロゲルのマイクロゲル化については、DNAハイドロゲルの粘性が高く、この機器の利用が適当ではないと考えられたことから検討しなかった。これに代えて、当初予定していた消化管粘膜への適用に加えて、定量的評価がより簡便であった膣粘膜での評価も行い、DNAハイドロゲルにCpG1668を内包することで持続的な免疫応答の誘導に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は膣内投与後の核酸医薬の活性ならびに治療効果を判定する。また、パルスインジェクターを使わずに均一なDNAマイクロゲルを作製し、その表面をキトサンで被覆することで、DNAハイドロゲルの分解抑制ならびにマイクロゲルの粘膜表面への付着によるさらなる滞留化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はクラスターテクノロジー社製パルスインジェクターの購入を計画していたが、DNAハイドロゲルの粘性が高いためにこの機器の利用が適当ではないことが判明し、購入を見合わせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
インジェクターの購入費の一部は、追加で検討した膣内投与実験のためのマウスをはじめとする消耗品の購入費に充てた。残りについては、インジェクターを使わずに均一なDNAマイクロゲルを作製するための研究に使用する予定である。
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