研究課題/領域番号 |
15K14944
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
堀口 道子 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (70632470)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DDS / 吸入製剤 / 再生治療 / 幹細胞 / 移植 / COPD / 難治性肺疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、肺胞幹細胞の凍結乾燥技術および幹細胞の吸入製剤化技術の構築を行い、製剤の有効性および安全性を明らかにすることを目的として研究を行った。
肺胞再生治療法が確立できれば、治療法のない慢性閉塞性肺疾患(COPD)や難治性の肺線維症の根治、外科的手術後の肺再建が可能となり多くの患者の命を救う革新的な再生治療技術となる。申請者は、COPDの根治的治療法の確立を目指して、破壊された肺胞の再生を作用点とする新規化合物の探索を行った。その結果、世界に先駆け、合成レチノイドAm80やPI3K阻害剤などがヒト肺胞上皮幹細胞を効率的に分化誘導し肺胞再生効果を有するという新規の知見を発見した。軽度の肺胞破壊モデルでは発見した分化誘導剤が肺胞の再生を誘導する優れた効果を示したが、完全に肺胞構造が破壊された重症例では分化誘導剤の投与のみでは肺胞再生効果が不十分であり治癒には至らなかった。一方で、幹細胞を肺に直接移植すると顕著な肺胞の修復が確認されているが、非侵襲的に肺胞幹細胞を移植する製剤は存在しない。本研究では、重篤な肺胞破壊病変の再生を可能とする非侵襲的な肺胞幹細胞移植の実現を目指して、当研究室の山下教授が開発した凍結乾燥法を基盤とした粉末吸入システム(世界72ヶ国で特許取得済み、(2010))を用いたヒト肺胞幹細胞の凍結乾燥吸入製剤を開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は以下の項目を予定しており、すべての項目において順調に研究が進んでいる。一部の添加剤の検討は予定以上に多くの物質を評価することが出来、予定以上に進んでいる。新規の凍結装置を用いた検討においては、機器の導入時期が予定より1、2カ月遅れたため予定より遅れて検討を始めたが、概ね予定通りの研究が進展している。 【本年度の検討項目】Ⅰ.ガラス化、医療用CASおよび段階的乾燥法を利用した肺胞幹細胞の凍結乾燥技術を確立した。 既に樹立済みのヒト肺胞上皮幹細胞をガラス化溶液(0.5Mトレハロース、45%エチレングリコールを含む)で培養し、緩慢もしくは急速凍結を行った。凍結1週間後に恒温槽にて融解し、幹細胞培養液にて培養開始後からの継時的な細胞生存率をMTTアッセイにより評価した。さらに特殊なCAS発生装置を使って細胞の中にある水分子を振動させ細胞壁や細胞膜を安定に凍結することが可能な医療用CAS:Cell Alive System(現有機器)を用いて肺胞幹細胞に最適な凍結速度と振動を検討し幹細胞の凍結技術を検討した。 Ⅱ.当研究室の特許技術を基盤とした肺胞幹細胞の粉末吸入製剤を構築した。 疎水性アミノ酸であるフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンを各バイアルに0.1~1mg添加し医療用CASと棚方凍結乾燥機(現有機器)にて凍結乾燥にて行った。吸入剤の性能は米国薬局方に準じた試験装置MSLI(現有機器)で肺分布を示す5μm以下の微粒子割合により判定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は特性の異なる様々な幹細胞に対して、本研究で同定した添加剤や凍結および乾燥方法が有用であるか評価を行うことで本研究の実用化の範囲を広げることを目標に研究を行う。 そのため、幹細胞移植の研究を行う国内外の共同研究機関と連携して研究を進めていくことを計画している。 更に研究成果を広く社会に還元するため、研究業績としての論文発表や学会発表だけでなく、臨床応用を目指した産学連携への発展を目指し関連企業等への情報提供を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度末に投稿中の論文のリバイスの為に消耗品代および英文校正費用を計上していたが、論文の審査に時間がかかっており、論文リバイスの為の予算を来年度初めに繰り越す必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文のリバイスの試薬として有機溶媒等の消耗品代を4612円使用する。 論文のリバイス後の英文校正費用として40000円を使用する。
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