研究課題/領域番号 |
15K14945
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
小暮 健太朗 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (70262540)
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研究分担者 |
扇田 隆司 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (80737263)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | べん毛 / DDSキャリアー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、腫瘍内pH変化を感知し、低pH領域(腫瘍微小環境)に向かって自走するDDSキャリアーの開発である。バクテリアは、内外のプロトン勾配に基づいて細胞装置(べん毛等)を回転させることで自走する。我々は、これまでの実績に基づき、バクテリアべん毛を組み込むことで、腫瘍微小環境を指向し腫瘍内部に侵入可能な自走型の新しいDDSキャリアーの開発を試みている。まず今年度は、過去の報告を基に大腸菌JM109株を用いてバクテリアゴーストの調製を行った。その結果、過去の論文中の条件では細菌が完全に溶菌してしまっていることが示唆された。参考にした方法の原理としては、膜に孔を空けるための4種類の試薬(CaCO3, NaOH, SDSおよびH2O2)をMIC前後の濃度で処理し、遠心にて細菌の中身を外に排出させ、ゴーストを作成することになっているが、実際に4種類の試薬を処理すると、処理前に認められた細菌ペレットが認められなくなり、ペレット画分中に核酸濃度およびタンパク質濃度を分光学的に測定したが、ピークは認められなかった。一方、処理途中で上清中にゲノムDNAと思われる不溶性物質が認められたため、上清の核酸濃度を測定した結果、ピークが認められた。これらのことから、細菌成分が上清に含まれていることが示唆された。また、ペレット画分をINT(塩化3-(p-ヨードフェニル)-2-(p-ニトロフェニル)-5-フェニルテトラゾリウム)で染色後、光学顕微鏡で観察したが、細菌構造体は認められなかった。以上の結果から、この処理では細菌細胞膜が完全に分解されていると考えており、ゴーストの調製には試薬濃度等のより詳細な検討が必要である。他方、今年度の進捗として、大腸菌からのべん毛単離を検討した結果、精製後のべん毛をSDS-PAGEに供したところ、一部構成因子の欠損が認められたものの、べん毛の単離に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去の論文に基づいて検討を行ったが、報告されている結果とならず、大腸菌のバクテリアゴースト調製が行えておらず、今後より詳細な条件の検討が必要なためである。また、べん毛単離に関しても、過去の報告通りに実施したが、条件検討に思いのほか時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
バクテリアゴーストの調製条件の詳細な検討を行うことで、べん毛を残したキャリアー粒子の構築を目指す。また別途、単離べん毛をリポソームに組み込み、べん毛キャリアー粒子の構築を試みるつもりである。構築できたキャリアー粒子の運動性を検証し、自走キャリアーの完成を目指す。
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