研究課題/領域番号 |
15K14946
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
倉田 祥一朗 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90221944)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共生細菌 / 抗ウイルス薬 |
研究実績の概要 |
近年、人的交流のグローバル化や気候温暖化などによって、昆虫などの節足動物が媒介するウイルス病の脅威が加速している。実際、約70年ぶりに蚊が媒介するデング熱の国内感染が確認され、感染者数は160名を越えた。この問題に、共生細菌の研究から大きな手がかりが与えられている。すなわち、共生細菌ボルバキアが、共生したショウジョウバエに、プラス鎖一本鎖RNAウイルスに対する抵抗性を付与することが報告された。細胞内共生細菌は、自立増殖が出来ないために、宿主に利益を与え共生関係を維持しようとする。ボルバキアも、垂直伝搬し自立増殖できない。したがって、この現象は、共生細菌が宿主を改変し、ウイルス感染を利用して共生細菌を保菌する個体群を維持し、共生細菌の伝搬を図る戦略と捉えることが出来る。本研究では、研究代表者が明らかにした共生細菌によるウイルス抵抗性付加機構を基盤とし、共生細菌を模倣する抗ウイルス薬の開発に必要なスクリーニング系の構築を目指す。そこで本年度は、ショウジョウバエ培養細胞を用いて、共生細菌によるウイルス抵抗性付与を培養細胞で再現できる系を確立した。そのために、まずショウジョウバエS2細胞に,ボルバキアが感染したカイコ細胞の培養上清を加え数ヶ月継代した.その後,ボルバキアゲノムを特異的に検出するPCRと,ボルバキアの細胞内での存在を調べ、培養細胞を継代しても、ボルバキアの感染が維持されていることを確認した。そこで、ショウジョウバエCウイルスを用いてウイルスの増殖を調べたところ、ボルバキア感染S2細胞では、非感染S2細胞に比較して、ウイルスゲノム量が低下していた。この結果は、培養細胞を用いて、共生細菌によるウイルス抵抗性付与を検出できる系が確立できたことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、宿主因子RBPに着目して、共生細菌を模倣する抗ウイルス薬のための化合物探索系を開発するとしていたが、検出感度の問題から計画を変更した。しなしながら、目的を達成するために、培養細胞を用いて、共生細菌によるウイルス抵抗性付与を検出できる系が確立できたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立した系を用いて、共生細菌を模倣する抗ウイルス薬の開発に必要なスクリーニング系の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、宿主因子RBPに着目して、共生細菌を模倣する抗ウイルス薬のための化合物探索系を開発するとしていたが、検出感度の問題から計画を変更し、培養細胞を用いて、共生細菌によるウイルス抵抗性付与を検出できる系を確立したため。
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次年度使用額の使用計画 |
確立した培養細胞系を用いて、共生細菌を模倣する抗ウイルス薬の開発に必要なスクリーニング系を構築するため、384ウェルプレートで行うハイスループットスクリーニングに最適化する。
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