研究課題
自然免疫関連受容体であるNLRP3は、リソソームの損傷に応じて情報伝達因子ASCおよびプロテアーゼCaspase-1と共にNLRP3インフラマソームを形成し、サイトカインIL-1betaやIL-18の産生を介して炎症を惹起する。尿酸塩結晶などの刺激物によるNLRP3インフラマソームの過度の活性化は痛風などの炎症性疾患の発症要因となるため、NLRP3インフラマソームの活性化を阻害する化合物の同定、およびその作用機序の解明は重要な研究課題である。我々は、痛風治療薬として用いられるNSAIDsであるジクロフェナクが、尿酸塩結晶刺激に応じたマクロファージからのIL-1beta産生を抑制することを見出した。一方で、ジクロフェナクは尿酸塩結晶刺激によるIL-1alpha産生は抑制することは出来なかった。尿酸塩結晶によるIL-1betaの産生はNLRP3インフラマソーム依存的であり、IL-1alphaの産生はNLRP3インフラマソーム非依存的であることから、ジクロフェナクは尿酸塩結晶によるNLRP3インフラマソームの活性化を抑制すると考えられる。ジクロフェナクは、シクロオキシゲナーゼ-2に対しても強力な阻害効果を発揮する。よって、尿酸塩結晶刺激によるNLRP3インフラマソームを介したIL-1betaの産生とシクロオキシゲナーゼ-2を介したプロスタグランジンE2の産生の双方を抑えることにより、痛風の関節炎症状を緩和している可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
NSAIDsであるジクロフェナクが、マウスマクロファージからの尿酸塩結晶によるNLRP3インフラマソームを介したIL-1betaの産生を抑制することを見出した。また、ジクロフェナクはIL-1alphaの産生を抑制しないことも明らかになった。
ジクロフェナクがNLRP3インフラマソームを抑制する機序を解明する。また、ジクロフェナクと同じく痛風の治療に用いられるロキソフロフェンがNLRP3インフラマソームに作用するか否かを検討する。さらに、ジクロフェナクやロキソプロフェンが、マウス痛風モデルにおいて炎症症状を緩和するか否かを検討する。
2015年4月に所属組織の異動があったため、本研究に関する遺伝子改変マウスの利用・維持を一旦停止した。
現在では、新たな所属組織のマウス施設において遺伝子改変マウスのコロニーが増えてきており、2016年度にこれらを用いた解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)
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