研究課題
研究代表者は、哺乳類のDNA損傷応答因子欠損細胞を用いて、化学物質の遺伝毒性を迅速、簡便かつ高感度に検出する試験法の確立を目指し、以下の研究を行った。具体的には、予備実験で紫外線などのある種の変異原に対して極めて高い感受性を示す、損傷乗り越え合成(translesion synthesis: TLS)型DNAポリメラーゼ(Polη、Polι、Polκ)三重欠損マウスより作出した胚性繊維芽細胞(mouse embryonic fibroblasts: MEF)を用いて、実験条件の最適化と化合物の濃度設定方法を検討した。そのために、エームズ試験、小核試験、染色体異常試験等により遺伝毒性物質であることが明らかで、かつ代謝活性化を必要としない化合物(メタンスルホン酸メチル、シスプラチン、カンプトテシン等)と、それらの試験で陰性であり、非遺伝毒性物質とされる化合物(NaCl、エタノール、クロロホルム等)に対する野生型MEFとPolη/Polι/Polκ三重欠損細胞(以下triple knockout cells: TKO細胞)の感受性をミトコンドリア活性を指標とするMTSアッセイにより測定した。その結果、ほとんどの物質で、予想通りの結果が得られる条件を見出すことが出来た。ただしエタノールは培地中の濃度が10%以上にならないと十分な増殖抑制効果が見られず、培地の希釈による増殖への影響が大きいので、対象からは外すこととした。
2: おおむね順調に進展している
計画に沿って順調に研究を進めた。非遺伝毒性物質の代表の一つとして取り上げたエタノールが、培地中の濃度が10%以上にならないと十分な増殖抑制効果を示さないという結果は予想に反したが、培地成分の希釈による増殖抑制と考えられるので、エタノールは対照群から外すことにした。それ以外はおおむね順調である。
当初の予定にしたがって、これまでの試験法で遺伝毒性物質あるいは非遺伝毒性物質として分類されている化合物について、さらに知見を増やすとともに、代謝活性化を必要とする化合物については、S9 mix処理の条件を検討し、本アッセイにかける。一方、これまでの試験法では判定が困難であった化合物について、本アッセイにかけて遺伝毒性の有無を調べる。また化合物ライブラリーを用いたラージスケール実験へと展開する。
「その他」の費用として予定していた論文作成関係の費用が、当該年度は少なくて済んだのが主たる理由である。
次年度は、前年度の分まで論文作成をさらに進める予定である。
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