プロテアソームの核外輸送担体の同定を目的として、以下のプロテオミクス解析および遺伝学的スクリーニングを実施した。 1.プロテオミクス解析:ヒト培養細胞ではカルシウムイオノフォア刺激、酵母ではアンカーアウェイ法による細胞質局在誘導時に、プロテアソームと相互作用が増加する分子を半定量プロテオミクス解析により探索した。同定されたECM29、RAD23、USP14など既知のプロテアソーム結合分子については、ヒト培養細胞、酵母でノックアウト細胞を作製し、プロテアソームの局在を解析したが、プロテアソームの核外移行に影響しなかった。 2.酵母遺伝学的スクリーニング:出芽酵母遺伝子ノックアウトライブラリーを用いて休止期のプロテアソーム細胞質顆粒形成能が低下する株の探索を行ったところ、脂質代謝酵素、細胞壁合成、転写因子、cAMP経路の制御因子など多岐にわたる35遺伝子が同定された。これらの遺伝子欠失株中ではプロテアソームの細胞質顆粒形成不全が再現性良く観察されるが、対数増殖期においてプロテアソームは明確な核局在を示し、経時的観察においても核外輸送遅延等は観察されなかった。 3.インポーティン結合タンパク質Sts1を用いた解析:酵母Sts1はインポーティンαおよびプロテアソームと相互作用する核移行のアダプター分子であり、必須遺伝子にコードされる。染色体上のSTS1遺伝子のプロモーターをガラクトースプロモーターに置き換えた株を新たに作製し、プロテアソーム局在を迅速に制御する系を作出した。Sts1の発現オン・オフに伴い、2時間以内にプロテアソーム局在を核、細胞質にそれぞれ変化させることが可能である。今後、本株を用いてプロテアソームの細胞質・核間輸送をさらに解析する。
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